詩・短編
□持て余した若さ
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体温の低い手が彷徨って、やっと僕の腕を掴んで止まった。
ぎゅっと布を掴んで何かを訴えようと見つめる瞳はどことなく焦点が曖昧で時には怯えるように揺らいだ。
言葉を忘れたみたいに、扱うことに嫌気がさしたみたいに空気を沢山混ぜて僕の名前を反復する。
時には彼女は酷く饒舌に棘だらけの言葉を吐き出すのだけど今日はそれも苦しいらしい。
体温を分けるように手を手で覆って乾いた唇に唇を当てたら少し身じろいでから大人しくなった。
僕は心から彼女に同情をする。
きっともっと上手く彼女を扱えるような人間はいるだろうに彼女はその人に出会えない。
それどころか僕に良いように扱われて滑稽な鳴き声を上げるだけだ。
しかし僕は彼女を手放せないし時には面倒になって捨て置いてもまたしばらくすれば傷んだ髪に指を通して穏やかに笑ったりする。
これ以上なく不器用にどうしようもなく彼女を愛してると仮に言えばそれは間違いなく真実だ。
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