詩・短編

□曇りガラスのお人形の失望
1ページ/1ページ



貴女を僕だけのものにしてから、1ヶ月くらい。

最初は手首も足首も縛って自由を奪っていたけれど、もう必要ない。

貴女は僕に忠実な人形になってくれましたから。

僕が望めば僕だけのために歌い、笑う。

勿論、他の人間と話すなんて許さない。

手に入れた、ずっと欲しかった美しい人。


でも僕はある日、

気付いてしまう。

否、本当はもう気付いていた。

貴女の、その、曇りガラスのような瞳に

色を無くした片言のような言葉に…

昔は、違った。

透き通った真っ直ぐな瞳に光を映していて

感情を含んだ豊かな声は弾むように無邪気だった。

壊れてしまった、壊してしまった。

純粋な貴女が、貪欲な僕で。


だけど、僕にはまだどうしてだかわからない。

何故、貴女は壊れてしまったのか。

僕はただ、僕だけのものにして保管して護っていただけなのに。

何故、貴女は………。


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ