問題魔法学園
□一番、最初に。
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目覚まし時計は疾うに鳴ったし、そのスイッチは切れている(レオンが切ったからだ)。
いい加減起きないとならないことは解っていたが、レオンはどうしても起きられず寝惚けた頭で布団に潜り込んでうとうとしていた。
(やっぱり、こうやってる時間が一番気持ちいいんだよなー……)
遅刻の危機が訪れていることも忘れ至福に浸っていたレオンだが、部屋の扉が叩かれる音に跳ね起きた。
「!?」
そして、その音に次いで聞こえた声に、未だ少しぼんやりしていたレオンの意識は完全な覚醒した。
「レオン、いるか?」
「せ、セリ! いるいる、今開ける!」
聞こえた声は、セリオスのもの。
慌てて寝台から降りたレオンは、急いで扉を開けた。
「お早う。もしもう出ていたらどうしようかと、……今起きた所なのか?」
「おはよ、セリ。いやあ、随分前に目は覚ましてたんだけどなー」
「急がないと朝食を食べ損ねるぞ」
「あーうん、今して来るちょっと待ってて!」
言うや否やセリオスが口を開く暇もなく扉を閉めたレオンは、いつにない速さで身仕度を整え再び扉を開く。
「ごめん待たせた!? よね!?」
「まあ、多少は」
「う……、あ、それでセリ、朝から俺の部屋に来るなんて、何か用でもあったの?」
「ああ、今朝君に言いたいことがあったんだ。僕が、誰よりも先に」
「……、?」
レオンが話を逸らすと、セリオスは思わせ振りな言葉を口にする。
心当たりは、ある。だが、期待をしていいものか。
「誕生日おめでとう、レオン」
いつものように自信たっぷりな笑顔とは違う、偶にしか見せないふわりと優しい微笑みと、告げられた言葉。
「……うん、ありがと」
「それと、これはプレゼント」
「俺に?」
「他に誰がいる」
「うん、そうだよね」
レオンは渡された包みの中身に期待を込めた思いを馳せつつ受けとる。
「後、もう一つ」
「?」
祝福の言葉と、プレゼント。誕生日に貰うものなど、他にあったか。
「目を閉じてくれ、レオン」
「ん? うん」
何が起こるのか楽しみにしつつレオンが目を閉じると、肩にセリオスの手がに触れた。そして、その顔がレオンの顔に近付いて来る気配。
(あれ? もし、かして、)
レオンが思った瞬間、二人の唇が重なった。
少し留まり、離れて行く感触。
「……もう、目を開けていいぞ。レオン」
レオンはセリオスのその声に、閉じていた目を開いた。
目の前にあったのは、頬を赤く染め、少し視線を逸らしたセリオスの顔。
「これも、プレゼント?」
「……いち、おう」
普段なら、セリオスからキスをしてくれることなど殆どない。
「セリってば、可愛いなあ」
「ど、こが、」
「自分からキスしといて恥ずかしがってる所とか」
「っ、」
レオンは、それっきり黙り込んだセリオスの耳許で囁いた。
「ほんと、可愛い。大好きだよ、セリオス」
囁かれたセリオスは、頬を染める赤色を更に濃くする。
そして、レオンの耳許で囁き返した。
「……僕も、大好き、だ。――――」
レオンは、とても幸せそうに破顔した。
(生まれて来てくれて、ありがとう、レオン)
Happy birthday Leon!