大体置き場。
□それは口実で、
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「いてっ……」
日曜日の午後。四月一日と百目鬼はいつも通り、四月一日の家で二人の時間を過ごしていた。
特に何をするでもなく、ただ一緒にいる。
二人共、それだけでも充分幸せなのだ。
「どうした、四月一日」
そんな穏やかな時間の中、百目鬼が丁度ポケットからリップクリームを取り出し、塗ろうとした所で、冒頭の四月一日の科白。
「ん……一寸、唇切れちゃって……」
見ると、確かに唇の一部が血で染まっている。
……染まっていると言っても、血が付いていると言う程度だが。
「お前、リップクリーム持ってないのか?」
「持ってるけど、面倒くて塗ってない」
四月一日のその言葉に百目鬼は溜め息を一つ吐き、四月一日の両頬に手を添え、仰向かせる。
「ちょ……、何だよ、百目鬼」
百目鬼は四月一日の抗議を黙殺し、その唇に自分のそれを近づけて行く。
そして、下で四月一日の唇に出来た傷を舐め、そこから流れ出た血を舐め取った。
そこでやっと唇が解放された四月一日は、百目鬼に対して問う。
「なぁ、何しようとしてんだ?」
「リップクリーム塗ってやる」
「は?」
「良いから、黙ってろ」
そう言うと百目鬼は、先程自分
が取り出したリップクリームの蓋を開け、四月一日の唇に塗り付ける。
「……大体、こんなもんか」
唇全体に塗り終わり、百目鬼はリップクリームの蓋を閉め、元入れていたポケットに仕舞う。
「あ……あり、がと」
「どう致しまして」
「あれ、でも百目鬼、お前は?」
「あ?」
「だって……、リップクリーム、塗ろうとしてたんだろ?」
「あぁ、おれは、『これ』で良い」
「これ? これって……ん」