大体置き場。
□「恋人」の意味
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「ねぇ、黒たんー」
「何だ?」
「『恋人』の意味って知ってる?」
ある時、ファイが行き成りそんなことを聞いて来た。
「あ? ……自分が付き合ってる相手のことじゃねぇのか?」
それに対し黒鋼は、自分の考える一般論を口にする。
「んー何かねぇ、世間一般のみんなが使ってる意味はそんな感じっぽいんだけど、辞書で調べると……」
そう言って、ファイは愛用の電子辞書を取り出し、その蓋を開く。
そして、いくつかボタンを押してから、その平たい機械を黒鋼の方へと向けた。
「こんな感じの意味なのー」
そこに映されていたのは、
『こいびと【恋人】
恋しく思う相手。おもいびと。』
との文字。
「だからさー、好きって言い合う前でも、付き合う前でも、お互いに好き合ってれば恋人同士なのかなー、と思って」
ファイは、黒鋼へと向けていた電子辞書をしまいながら言った。
「……お前がそう思うなら、そうなんじゃねぇのか」
黒鋼は、飽くまで自分の考えをはっきりと語らない。
「黒たん冷たいー! ……じゃあさー、オレ達はどうだったのかなー?」
「……さぁな」
「……黒るんは、オレに好きって言ってくれた瞬間から、オレのこと好きになった訳じゃないんでしょー? それよりもっと前から、好きで、いてくれた……んだよ、ね?」
「んなの、当たり前だろう!」
ここで強く否定されたことが、ファイはとても嬉しかった。
「……なら、きっとオレ達も、好きって言い合う前から、恋人同士だったんだねー。……何か、嬉しいやー。ずっと、繋がってたみたいで」
「そうか」
「うん!」
――ぶっきらぼうにそう言った黒鋼も、その実嬉しそうな顔をしていた。
finish.