佐野×京介

□頭痛
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深夜のコンビニのバイトが終わりアパートに戻った京介は、部屋のドアを開けた瞬間顔をしかめた。


白い煙が京介の1Kという狭いアパートの部屋の中に充満していたのだ。


一瞬火事かと思ってしまうような煙の量だが、匂いからすぐに嗅ぎなれたタバコの煙だとわかった。


留守の部屋に勝手に入りこみ、こんな殺人的な量の煙を出すほどタバコを吸う様な奴は一人を京介は一人しか知らない。










「・・・・なにしてんだ」


思った通り、部屋の奥にはベッドに寝転がった状態でタバコを吸っている佐野の姿があった。

狭い部屋の中心に置かれたちゃぶ台には、吸い殻がこぼれ落ちてしまいそうなほど入った灰皿がある。


いったい何時間この部屋にいたというんだろうか。

こちらを見ることも無く煙草を吹かし続ける佐野を跨いで、ベッドの横にある窓を開けに行く。

春だといっても太陽が昇っていないこの時間はまだまだ寒く、窓を開けてしまうのは気が進まないが、この煙の量は人間が耐えられるレベルを遥かに超えているのだから仕方が無い。

窓を開けると外の澄み切った冷たい空気が入ってくる。

帰ってきたそのままの格好で未だコートを着ている京介とは違って、セーター一枚でいる佐野にとってはさぞかし寒いことだろう。


煙草の煙が徐々に外に出て行き、新鮮な空気が部屋の中に取り込まれる。

そんな中、また次のタバコに火をつけようとしている佐野を京介はベッドの上から蹴り落とした。



「・・・・・っっ」


それなりのダメージを与えられたのだろう。

とりあえずタバコを吸い続けるのは諦めたらしい。

佐野はまだ火をつけていないタバコを灰皿の中へ押し込んだ。

しかしベッドの下の床に寝転がったままで体は起こさず、視線だけを京介に向けてくる。


「・・・・」


「・・・・」



見てくるだけで何も言葉を発しない佐野にイライラしながら京介は尋ねた。



「つーーか、なんでお前がこんな時間にここにいるわけ?」


確か、今日も学校を風邪だと言って休んでいたはずだ。

可愛いと有名な一学年下の女が、見舞いに行くつもりなのか佐野の住所を聞く為に京介の所に来たから間違いない。


普段なら他人の住所を教えてやる様な面倒なことを京介は絶対にしない。

しかし、女があまりにもしつこく聞き出そうとしてくるので拒否するのも面倒になり佐野の家の場所を教えていた。


「んーーーーー・・・なんか、ちょっと手を出しただけの女の子がどこでか知らないけど俺ん家の場所を知ったらしいんだよね。お見舞いがしたいとか言って今も家の前に張り付いてるんだけど。ああいうのってマジで迷惑」


どこか責める様な目で俺を見てくる。


どうやら京介が、女に教えたことはすでにもうバレているようだ。


だが佐野に一方的に責められる覚えはない。


「へーーーー、でもそれって俺の部屋に来る理由にはならなくねぇか?てめぇが誰かれ構わす手を出すからそういう面倒くせぇ事になるんだよ。相手は選べよ」


上着を脱ぎながら佐野に言い返す。


京介も女には不自由していない。

付き合っている女はいないが、やりたいときに会う女はいる。

しかし、佐野の女関係は京介の比ではない。


佐野は外ではかなり愛想が良い。

京介にしてみれば、嘘くささ満載の笑顔を貼付けて周りの人間を騙している。

顔が良いのは嫌々ながら認めるが、こんな奴がモテるとは世も末だ。


「普段ならこういう事にはならなかったはずなんだよ。女には自分の部屋は絶対に教えないし。だいたい今の俺ん家の場所知ってるのって京介だけなんだけど?学校には実家の住所を伝えてあるし」


・・・・・・それは少し意外だ。


部屋に女を連れ込みまくっていると思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。

まぁ、やることはホテルか女の家でしているという事だろうが。



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