佐野×京介

□VS
1ページ/2ページ



「としあき〜〜〜なんでマンションにいなかったのよぉ」

やかましい女の甘え声で京介は目が覚めた。

まだ完全に覚醒しきらないままに、うっすらと目を開け、声がした方を見る。

すると、京介のすぐ前の席で佐野が女とイチャついていた。

女の方は佐野のひざの上に座っているという状況だ。




うぜぇ・・・・

佐野が自分の前の席にいるだけで、最悪なのだ。

しかしそれは・・・、しかたがない。

クラス名簿が佐野の後ろになった時点で、この席順は決まってしまったのだ。

まわりがガヤガヤとうるさい事から考えて、今は昼休みなのだろう。

問題は、昼休みになればいつも女と食堂に消えるこいつが、現在その席に居て京介の大事な睡眠を邪魔したということだ。

連日の深夜バイトのおかげで、京介は今日、午前の授業を完全に寝て過ごしてしまった。

出来れば、放課後まで寝て過ごしたかったぐらいなのに、佐野の女に起こされるとは・・・




ひざに乗っかっている女には見覚えがあった。

この前、佐野の家の場所をしつこく聞いてきた女だ。

改めて見ると顔は可愛いが、やはり自分が迫っておちない男はいないと思っているのがありありと感じられる。


「としあきが風邪で休んでるっていうからお見舞いにいったのに〜〜、携帯に電話しても繋がらないしさぁ」


そしてこの甘え声がまたきもちわるい。


「ごめん、かなり調子が悪かったから実家に帰ってたんだよ」


一方佐野の方は、女から見れば最高の笑顔で謝っているが、嘘ばかりだ。

佐野が風邪で調子が悪いだけで実家になんて戻るはずがないし、だいたい佐野はこの女が見舞いにきた日は京介の部屋に押し掛けてきていた。

思い出したくもないが、それが事実だ。


「でも俺は、美穂がお見舞いに来なくて良かったと思ってるよ」


女が喜ぶであろう、甘い笑顔で佐野が続けた。


「どうしてぇ〜〜私がお見舞いに行くのは迷惑ってことぉ??」


「違うよ、美穂がお見舞いに来たら風邪をうつしちゃいそうで嫌だったんだよ。美穂がそばにいたら、キスもそれ以上の事もしたくなっちゃうだろ」


「やだぁ〜〜」


佐野に耳元で囁かれて、女の方もまんざらではない感じだ。






あーーーーうぜぇ。

聞いてるだけで、きもちわるくなってきた。

こっちは今日もバイトがあるから睡眠時間を取らなければならないというのに、なんでこいつらのいちゃつきのせいで起こされにゃならんのか。


ガンッッッ!!

京介は前に座っていた佐野のイスを思いっきり蹴り上げた。

今までガヤガヤと騒々しかった教室が一瞬で静寂につつまれる。

佐野の上に座っていた女の耳障りな声も止まった。


「マジうぜぇ、いちゃつくんなら他の場所でやれ。ここ以外でならお前等がイチャつこうがセックスしようが気にしねぇ。とりあえず、俺の睡眠の邪魔すんな」


京介はイスをもう一度蹴りあげた後、佐野の反応を確かめる事もせずに再び眠りの世界へと戻った。



完全に寝る態勢に戻った京介に何も言わず、佐野はさっさと教室を出て行った。

置いていかれそうになった女も、あわてて佐野を追いかける。

「どうして何も言い返さないのよぉ〜〜」

その質問に対して、佐野は何も言わなかった。


教室で女の問いを聞いたクラスメイトたちは誰もが思った。

京介に言い返せる奴がいるなら見てみたいと。

そんな質問をするなんて、お前は清水京介の怖さを知らなさすぎると。

それからは再び京介を起こし怒りを買っては大変だと、午後の授業が始まるまで他の場所で時間を過ごそうと、次々と生徒たちは教室から出て行った。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ