その他

□日だまり
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強がり






床に座っている達也の体が、暗くした部屋の中でモゾモゾと落ち着きなく動く。


怖いなら、見なければいいのに。


ソファに座り、テレビ画面にくぎづけの達也を見ながら考える。

せっかくの休みなのに、達也はレンタルしてきたホラー映画に夢中だ。


少しムカツクな。


あまりにもほったらかしの状態に、ちょっとしたイタズラ心が芽生えてくる。

その映画の序盤の盛り上がり所であるシーンがテレビに映る。

その瞬間を狙って、俺は達也のうなじをサラリと撫でた。



「・・・・・・・・・っ!!!」


声にならない叫びをあげて、達也は背筋を緊張させる。

そしてゆっくりと、こちらを振り向いた。


「・・・・・・なんだ、祐介さんか・・・・・・驚かせないでよ!」


一瞬ほっとした顔をしたくせに、すぐにプイッと顔を画面に戻してしまう。

俺は達也の後ろに座って、後ろから達也を抱きしめる。


「怖かった?」


顔を覗き込めば、少し目が潤んでいるのがわかる。


「別に怖くなかったよ!もう、あっちに行ってて!」


潤んだ目でそんな事を言っても、強がっているのはバレバレだ。

しかも、達也の手は無意識なのだろう、俺の服の袖を強くにぎっている。


あぁ、すごく可愛い・・・・・


「ここで一緒に見るよ」


しっかりと達也を抱きしめ直して、画面に視線をやる。


「・・・・・・・・、何もしないでよ」


小さくそう言って、達也も画面に視線を戻した。







映画がクライマックスに近づき始めた。

チラッと達也と見ると、顔をこわばらせながらも、目は画面にくぎづけだ。

達也の背中は完全に俺の胸に押し付けられていて、俺の腕の中で落ち着きなくモゾモゾとしている。

だが、腕に少し力を入れて抱きしめてやると、少し落ち着いたようで動くのを止めた。


俺の腕をギュッとにぎる。


達也が自分からくっついてくるなんてとても貴重だ。


普段は恥ずかしがって、なかなか自分からはくっついてきてくれない。


貴重な時間を俺は存分に堪能した。






映画が終わり、怖かったんだろうと聞くと、全然怖くなかったと必死に言い張る。

ちょっと涙目になっているくせに、そんなことを言う達也はとても可愛い。

せっかくの2人の時間にどうして家でビデオを見なければいけないのかと思ったが、あんなに可愛い達也が見れるならこういう事も悪くない。


怖くないと強がりながらも、俺にくっついてくる達也は最高に可愛かったから。






end



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