08/19の日記
20:46
メモメモ
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夢を見ていた。それは、僕の幸せが始まった日の夢。今でも鮮明に覚えている。きっと、誰かにその話を話したとしても、僕は一字一句間違えずに話せるだろう。何年たっても、きっとに。死ぬ間際にも、絶対に思い出す。それくらい、僕はあの日を忘れられない。
そう、忘れられないんだ。
暗い闇に突き落とされていた僕に、一筋の優しい光が射したあの瞬間を。
――僕の恋が、人生が、明るく照らし出された瞬間だった。
そこにたどり着くまで、大きな壁やたくさんの思い、たくさんの試練があった。それら全てを乗り越えて、僕たちは――。
頬に誰かの手のぬくもりを感じてゆっくりと瞼をあげる。いつものように、ジェイドの執務室においてあるソファーでジェイドを見ていた。そうして過ごすのが、僕の日課だった。ジェイドを見ていたり、話をしたり、それからそのソファーで寝るのも、僕の日常の一つだった。今日も、僕はソファーで彼を見ていたら、いつの間にか眠っていたようだった。気がついたら寝ていた、なんていつものことだった。でも、誰かのぬくもりに気づいて起きることは、ジェイドの執務室で寝ているときは一度もなかった。以前と比べれば、何倍も安全だし、寝込みを襲われることはない。別の意味では、あるかもしれないけど、あってくれると僕は嬉しい。
目が覚めてすぐ、いつも見えるはずの天井が見えず、そのかわりに視界いっぱいにジェイドがうつる。僕の頬に触れたぬくもりは、どうやらジェイドの手だったみたいだ。優しい笑顔をうかべ、僕の寝顔でも見ていたのだろう。
「あぁ、すみません。起こしてしまいましたね」
優しい笑顔から困ったような顔で、ジェイドは言った。たったこれだけで、僕が起きるなんてジェイドも思わなかっただろう。僕もびっくりしている。寝ている僕の頬に、なんとなく手をそえただけで起きるなんて、きっと誰も思わない。ここはすごく安心できる場所だから、そんなことでは絶対に起きないのに。でも、今は視界いっぱいにうつる、夢では見せてくれなかったジェイドを僕はずっと見ていた。困ったような顔も優しい笑顔も夢の中では見せてくれなくて。見れたとしても、笑顔は作ったような笑顔で心からの笑顔なんて見れなかった。まだあの時は、そんなに親しくもなく、仲間なんてものじゃなくて。 仲間として一緒にいたのに、僕とジェイドは敵同士に近かったから。今では、もうそんなことはないのだけど。守りたい存在なのに、この街では僕は、彼に守ってもらっているようなものだ。それがすごく腹立たしいが、仕方ないとしておこう。
頬にまだあるジェイドの手に、自分の手を重ねて、文句を一つ口にする。
「せっかくいい夢見てたのに…」
少し残念そうに言ってやれば、今度は困ったような顔から、ほんとうに申し訳なさそうな顔をした。その反応を楽しみ、クスクスと僕は笑う。それから、冗談だよと返してあげる。文句を言ってみたけど、心からそう思ってるわけじゃないんだから。
あたたかな夢の中から途中で引きずり出されてしまったけど、ここは…この世界でこうして生きていることこそが、さっきまで見ていた夢の続きなのだから。
「どんな夢か聞いてもいいですか?」
「…いいよ?」
自分の言葉が言い終わるとともに、ジェイドの手をおもいっきり引っ張ってやる。そうすれば、いきなりのことで身体がついていかずにバランスを崩して僕の上に倒れこむ。なんだか、押し倒されたみたい。僕がいきなり引っ張ったからなんだけどね。
「いきなり何をするんですか」
「だって、聞きたいんでしょ?」
掴んでいたジェイドの手を離し、ゆっくりと手を伸ばす。それほど遠くはないジェイドの両頬に手を優しくそえる。メガネをとり、近くの机に置く。ゆっくりと彼を自分の方にひっぱり、そうして、彼の耳元でつぶやく。
―――君が、僕に好きだと言ってくれた、あの日の夢だよ。
あれは、ルークたちと行動をともにしてだいぶたったころだった。初めのうちは、僕のことを警戒していて、あまりいい感じではなかったけれど、少しずつその警戒もとけて、みんなとは仲良くやれていた。もちろん、ただ一人だけを除いて、だけど。
一緒に行動する前は、世界の人たちに銀髪の悪魔なんて恐れられていて。ほんとうなら、もうここにはいなかったのかもしれない。それでも、今こうしてここにいられるのは、セルジュやラフィス、それからピオニー陛下のおかげだった。ピオニー陛下には、セルジュやラフィスのような純粋な思いじゃなくて、ただ戦争のために使われるかもしれない。そんな不安が少しあった。僕はまたあの暗い暗い世界に連れて行かれる。僕の一つの居場所であり、抜け出したい場所。人を殺すことは好きだ、楽しいから。でも、怖い。人を殺すことはいやだ。僕の中にはそんなよくわからないことが渦巻いていた。戦争に使われる・・・それでも、僕はよかった。こんなことをセルジュやラフィスに言うと怒られてしまうかもしれない。でも、ほんとうなら死んでいたはずの僕に、今こうしてここにいられるチャンスをくれたのだから。それに、あそこから抜け出すなんて不可能なのだから。
この命は僕の命であって、僕の命じゃない。
ほんとうに、怒られそうな言葉だと思う。
僕が死んでもそれはこの世界にとって、ただの嬉しいことなのだ。赤の他人である彼らに、僕という人の死は、なんてないものなのだ。僕の命は僕のものなのかもしれない。それでも、僕はそう思わずにはいられないほど、ピオニー陛下に感謝していた。きっと僕は、ピオニー陛下に感謝するとともに、僕は自分の命を捨ててしまったのかもしれない、僕の命は、彼に捧げてしまったのかもしれない。感謝していても、絶対に本人の前では言わないけどね。調子に乗って何をされるかわからないから。でも、一つだけ感謝出来ないことがあった。それは、僕に監視をつけたことだ。監視をつけたことには仕方ないと目をつぶることにする。それが当たり前の反応で。でも、これはあんまりだと思う。これじゃあ普通にいることさえ、僕にはつらい。
さっきも言ったように、みんなとは仲良くやれているのだ。ただ一人を除いて…そのただ一人こそが、
「なんですか?」
チラッと盗み見たら、どうやらバレたみたいだ。しっかりと目が合ってしまう。まさか目が合うなんて・・・気まずいと思うのは僕だけなのだろうか。彼はそんなことすら思わないという顔で、僕をずっと見ていた。
僕がこうしてここにいられるのは、この怖い監視さん、ジェイドがいるからだ。彼以外の人たちなら、僕は何人相手をしようと勝てるだろう。でも、彼だけは強さが違う。ラフィスに封印術を喰らったなんて聞いたけど、それはもう随分前の話だ。僕は封印術なんて喰らったことはないからよくわからないけど、きっとジェイドならほとんど解いてしまっただろう。ガイにも話を聞いたのだけれど、最初は今よりも弱かったと言えば失礼になるのかな?でも、今はその表現しなくて。封印術ってすごいんだな、なんて思ってしまった。でも、あれってお金がすごいんじゃなかっただろうか?国家予算もの…?いったいどこの誰がそんなものを用意して彼に使ったのか、すごく気になる。
「なんでもないよ」
さわやかな笑顔で僕を見ていたジェイドに、僕はやっと返事をする。ずっと目が合ったまま、しかも何も言わずにそらすのは失礼だと思ったからだ。あとは、そうでもしないと、ずっと僕のことを見ていそうだから。
まぁ、彼は監視だからずっと僕のこと見ているんだけどね。でも、時折、監視というわけじゃなくて、僕を見ているときがあった。もしかしたら、僕という人を観察しているのかもしれない。ジェイドとの中にある僕と、ここにいる僕はやっぱり違うから。彼は、もう一人の僕を知っている。もちろん、僕も彼の笑顔の裏側を知っている。というより、わかってる?とても黒いもの、そして、かれのとてつもない強さと怖さを。
戦場で彼は有名だから。戦場に出たことのある人なら絶対に知っている。キムラスカにいても、彼の噂を聞くのだから。いや、キムラスカだからだろう。もちろん、まだ銀髪の悪魔として世界を恐怖に陥れていた時に、そんなジェイドに何度も会ったことがあるから、戦場での噂も彼の強さも知っている。だから、ジェイドに会うと、僕はまず命の終わりを感じる。さっきも言ったように、彼の強さはここにいる人たちと全然違うのだから。
とくに僕が怖いと思っているのは譜術だ。僕も譜術は使うけど、僕の譜術なんかより何倍も威力が違う。
さすがは死霊使い、なんて思ってしまうほどに。
会うたびに死ぬかもしれない、なんてことを思うより先に、ただ楽しいと思うようになっていた。
彼と戦うのは楽しい。それは、人を殺すのが楽しいという思いとなんだか似ていた。
人として、たりない感情なんじゃないだろうか。悪魔なんて、僕にぴったりだと思う。
人を殺すのが楽しい、なんておかしいよね。
「そろそろ飯にしようぜー」
先頭を歩いていたルークが、後ろを歩いている僕たちに聞こえるように、そう言った。
辺りを見渡してみれば、もう夕暮れだった。いろいろと考えて歩いていたからだろうか、まったく気付かなかった。こうして何もなく一日を終えるのにも、そろそろ慣れてきた感じがするけれど、どこか変な感じがするのはまだなれていないのだろうか。みんなが集まり、役割分担を始める。今日の料理当番は確かアニスだったかな?
アニスの料理は美味しいから僕は大好きだ。料理がうまい人がパーティにいると、いいよね。その人の番になると、ご飯の時間が楽しくなるのだから。今日のご飯は何かなーなんて考えてると、誰かが僕の方へとやってきた。
「レイリス、一緒に薪拾いに行こうぜ」
声のする方を向いて見れば、そこには笑っているルークがいた。その笑顔は、友達にむける笑顔だった。
ルーク、聖なる焔の光。その名前だけじゃなく、僕にとって彼の存在は眩しかった。ここにいる誰よりも、光輝いているように見えた。ほんとうに光を放っているわけじゃないのに、僕は少し目を細めて彼を見ていた。
「どうしたんだ?」
そんな僕を、ルークは少し不思議そうに見ていた。
彼はただの人なのだ。自分なんかよりもずっとずっと人なのだ。僕のように血にまみれて汚れているかもしれない。でも、ルークの場合は水で洗い流せる。僕は違うのだ。洗っても、何をしても、僕の身体から血の臭いがとれることはない。身体に染み付いているから。
闇の世界にいるわけでもない、ただ彼は光の中にいる。
そこが彼にとって、当たり前なのだ。
それは今、僕が羨ましいと思っていることだった。ルークだけじゃない、この場にいるみんなに対しての思いだ。
どれだけ血に汚れようと、みんなは洗い流せる。普通の人として、生きていける。太陽の様な存在なのだ、ここにいるみんなは。だから、僕はこう思うのだ。
――あぁ、眩しい。
光の世界にいること、誰かに必要とされていること、普通の人として生きていけること、それが今の僕には羨ましかった。近寄ることが出来ない。触れることが出来ない。友人としていることが、僕には苦痛に感じた。こうして話をしていることが、なんだかひとつの罪に感じた。
ルークはほかのどんな人たちよりもまぶしい。それは、彼に人としての何かを感じたのかもしれない。そして嫉妬してしまったのだろう。
きっと僕も・・・。
――僕も、ルークのような”人”でいたかった。
きっと、そうなんじゃないだろうか。彼を見てこんなにも眩しいという思いや、うらやましいと思うのは。
こんなことを思うのも、こんなにもつらく感じるのも、きっと僕も、彼と同じ立場にいたかったんだと思う。
「ごめん、なんでもないよ」
「ほんとか?」
「そんなことより、張り切って薪拾うぞー」
「そうだな!」
張り切って薪拾いに向かうルークの背中を見て、ふと思った。
ルークが太陽ならば、僕は何なのだろうか?
ルークが人ならば、僕は何なのだろうか?
僕は彼のそばにいていいのだろうか?
前を歩くルークの背中を、僕は追った。おいていかれないように、でも近づきすぎないように。
彼を、僕の汚れで染めないように。
パチパチと火の粉が飛ぶ音がした。僕とルークが拾ってきた薪は、アニスの料理に使われ、そして今も使われている。夜の寒い空気を、僕たち二人が拾ってきた薪が暖めてくれる。結構な量を二人で拾ってきたから、朝までは絶対にもつだろう。アニスの料理もおいしかったし、今日も晩ご飯は満足だ。
時間はもう夜が深まってきたころだった。見張りにはジェイドがつき、他の人たちはみんな、楽しい夢の中。僕の隣で寝ているラフィスも、夢の中だ。どんな夢を彼は見ているのだろうか。その夢が楽しいものならいいのだけど。僕も横になって寝ようとしているのだけど、眠れなくて。寝るために目をつぶっていたり、夜空を眺めていたり、眠気が訪れるのを待っていた。こうして安心して夜を過ごすのは、なんだかなれなくて仕方がない。当たり前のように続いていた眠れない日々は、もうないのだ。きっといつか、屋根の下、ふかふかなベッドでゆっくり眠れる日が来るんじゃないだろうか?
いつか、の話なんだけどね。
それでも、少しは夢を見てもいいと思う。・・・そう言ったのは、ガイだったね。だから、叶うかなんてわからない夢を見ていようと思う。
「眠れないのですか?」
少し離れた場所で、見張りをしていたジェイドが声をかけてきた。横になったまま、そちらの方に顔を向けてみれば、ルーク曰くうさんくさい笑顔をこちらに向けてこちらを見ていた。
「眠くないんだよ」
きっと練れないだろうと重い、寝るのをあきらめて起き上がる。そのうち眠気がくるだろうと思いながら。その眠気がくるまですることがないから、ジェイドの向かい側へと座る。
「いいのですか、寝なくて。近頃まったく眠れていないのでしょ?」
「なんだ、気づいてたんだ」
恐れ入りました。そんな感じに両手を肩の位置まで上げる。ほんと、彼の観察力にはまいる。ここ数日間、眠れていないのは本当だ。
やっぱり、安心してすごす夜だからだろうか。
「夜になるとね、どうしても眠れないんだ。この身体が覚えちゃってね」
どれだけ寝ようとしても、浅い眠り。起きる一時間前ぐらいには、やっと眠れるのだ。
それさえも、彼は見抜いているだろう。
このままじゃ、全部見抜かれたりして…。
ほんと、怖い人だよ。
木にもたれかかり、夜空を見上げる。
きっと僕が眠れないのは、闇夜にしか生きれないもの、だからじゃないだろうか?
きっと、僕には夜がお似合いなんだよ。
二人で話すこともなく、ただ夜空を見上げてすごした。
今思えば、これがいつもの日課のようだった。
結局眠れないまま朝をむかえた。いつになっても眠気は訪れなくて、木にもたれかかり少しずつ変わっていく空を見つめていたり、たまに話しかけてくるジェイドとの会話で朝になっていた。なんだか、ジェイドは僕に合わせて起きていたような感じだった。たぶん、それもただの勘違いなのだろう。彼にとって僕は、ただの監視しなければならない人なだけなのだ。
空が少しずつ明るくなり出したころ、やっと眠気がやってきた。やっとか…なんて思っていたら、ふっと意識がなくなっていて。次に目が覚めた時は、朝ごはんを作っているいい臭いが漂ってきた。
もう朝か。やっと眠れたのに…まぁいつものことなんだけどね。
「あれ?」
いつのまにか毛布が掛けられていた。寝る前にはなかったのに…信じたくないけど、彼しかないよね。
「ご飯だよー」
少し離れた所から、アニスの元気な声が聞こえた。今日もアニスは元気だな。
木にもたれかかって眠っていたからか、少し身体が痛い。少しストレッチをしていると、傍にラフィスがやってきた。僕の顔を見たと思ったら、少し眉間に皺を寄せていた。
「あんまり眠れなかったのか?」
「隈でも出来てる?」
「いや、少し寝むそうに見えたからさ」
「きっと寝起きだからだよ」
最期に一つ伸びをしてから、ラフィスと一緒に朝食へと向かう。早く行かないとルークがうるさくて仕方がない。というか、早く行かないとルークに全部食べられちゃうかも。
「ジェイド」
「はい?」
いつも通り、レイリスの後ろを歩くジェイドに話しかける。前を歩いているレイリスは、俺に気づくことなくルークと仲良く話をしていた。最初は、誰もが警戒して話しかけることすらなかったのに、今ではああやって誰かと楽しく話をしている姿がうかがえる。俺には、それが当たり前だったけど、レイリスからしたらどうやら違うようだった。離れてから、アイツにいったい何があったのだろうか。
「いつまで、レイリスのことそうやって見てるんだ?」
俺は銀髪の悪魔の話を何一つ知らない。誰も教えてはくれなかったし、俺の耳には絶対入らないようにされていた。一緒にいて思ったのは、ジェイドの監視だけで弱るようなやつじゃないってことはわかった。昔から、そんなに弱いやつじゃないことを、俺は知っている。悪戯が大好きで、人を殺すことが楽しいなんて思うようなやつじゃないのに。
「もう、ここにくる前のようなことはしないだろ、さすがに」
「わかっていますよ。ですが、もう少しだけ…」
そうしてジェイドは、レイリスを見る目を少し細める。
レイリスの何かを知ろうとするかのように。
「私には、どうしても納得できないのですよ。ここにいる彼が、あの銀髪の悪魔なのかが」
「?」
俺にはジェイドの言っている意味がわからなかった。引っかかったのは、『あの銀髪の悪魔』という言葉。『あの』とはどういうことだろうか。
「なんだよ、あのって…レイリス本人も銀髪の悪魔だって言ってるし、アンタだって戦場で見てるんだろ?」
「えぇ、そうですよ。ただ、ここにいる彼と、戦場でみた彼とはどうも一致しないんですよ」
――彼がこんなに笑うような人には見えなかった。笑うと言えば、人を殺して冷たく、狂ったように笑う姿だけだった。
ジェイドの言葉に、俺は前を歩くレイリスを見てしまう。俺は、レイリスのことを知らない。レイリスが行方不明になってから、それからのことは俺は何も知らない。世間では銀髪の悪魔だなんて言われている。そんなことさえ、俺は知らない。
「戦闘でも、一度もそんな姿は見えませんでした。ずっと彼を見てきましたが、一度も」
「ずっと?」
「えぇ。ずっと。近頃あまり眠れていないことと、ルークを見るとき目を細めていることには気づきましたか?」
さすがジェイドだな…。怖い、怖すぎる。
敵にまわすのは絶対嫌だな。今度、レイリスに敵にまわしてみてどうだったのかを聞いてみようと思った俺がいた。
それよりも、ジェイドの言葉だ。俺も気づいていた。ルークを見るとき、眩しそうに目を細めるアイツを。ルークだけじゃない。他のみんなを見る時もそうだ。ただ、ルークを見るときの方がその行為がよく見られる。
「あとはあれだな。ルークに触られるのを極度に嫌がってるってとこだな」
「おや、気づいていたのですね」
「セルジュにしっかり見てろって言われたの」
「仲がいいですね、セルジュとも彼とも」
最後の言葉は無視だ、無視。なぜか嫌味に聞こえたんだが、俺には。
それにしても、ジェイドは今まで一緒にいてレイリスのことを名前では呼ばない。やっぱり、まだ認められないんだよな。レイリスは、普通に名を呼んでいるみたいだし、ジェイドと話をしているときは少し楽しそうだ。でも、あきらかに何かのせいで弱っている。
「」
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