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「雪が、」
窓の外を見る衛の傍に行くと、ひやりとした窓ガラスの冷気と共に、遥は白い雪を感じた。
「ほんとだ。何日振り?」
「3日振り、くらいでしょうか」
雪の粒は大きい。絶えなく地へと吸い込まれて行く。積もるだろうか。クリスマスに食べた真っ白なケーキを思い出し、街があんな風になったら綺麗だな、と思った。
「…ああ、そうだ」
衛は思い付いた様に言うと、ちょっと待ってて下さいと研究室を出た。
そして、暫くして戻って来た。
その手には、遥が今思っていた通りの真っ白なケーキが…一片。
「ケーキ!」
「戴いたのを忘れていました。よかったらどうぞ」
はい、と差し出され、彼女は嬉しそうに皿を受け取った。
「おいしい」
「それはよかった」
口の中に甘いクリームの味が広がる。何日か前にあんなに食べたのに…やっぱりケーキは美味しい。
「衛は?折角貰ったんなら、一口くらい…」
半分ほど食べた頃に遥はそう言って、動きを止めた。
「遥?」
「…衛、」
不思議そうな顔をする衛を見上げ、遥はケーキを彼の前に突きだした。
「…誰に貰ったの、これ」
その疑いの視線を、衛はしまったという表情をして受け止める。
「山実教授に」
「うそ」
「…自分で」
「アンタが買うわけないでしょ」
白状しなさいどうせ大学のかわいい女の子に貰って、と彼女がまくし立てた時、
「っ―――」
衛は遥の唇を、ぺろりと舐めた。
そして、
「…やはりケーキは甘いですね、私には無理そうです」
と言って、丁度呼びに来た教授を共に、部屋を(逃げるように)出ていった。
「っ〜〜〜〜〜!!」
残された遥は顔を真っ赤にして、文句を言う代わりにケーキのスポンジに勢いよくフォークを突き刺した。
外では、まだ雪が降り続いている…。
END
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