□B
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「俺の方が巧い、」


何時もより少々長いキスの後、羽生は遥の瞳を見詰めたままぼそりと呟いた。


「…あのねぇ、そういう事って普通自分で言う?」

「なら、お前が比べてくれるのか?」


遥は溜息を吐き、途中まで開いた胸元のシャツを手で手繰り寄せた。

冷めちゃったわ、と言いたげだ。


「何時もそうなのよ、事ある毎に衛は衛はって…」

「…なんたって、相手が優柔不断なものでね」

「何それ!?あたしの所為!?」


羽生はじろりと彼女を見る。

「………よね、はい…すみません…」




2人でコーヒーを飲んだ。
薄い、あまり美味しく無いコーヒーだった。


「…でもアンタさ、そんなに衛と会ってる訳でも無いじゃない」

「1度会うと、何て言うのか…やたらにインパクトがある」

「インパクト…」

「胃がムカつく」

「へぇー…」

「この前電話が来たときだってそうだ。
嫌味を言うだけ言って、さっさと切りやがった」

「ふーん………」

「あまりに煩くてな、文句を言うために何十回と掛け直した。今ではきちんとアドレス帳に登録されてる」

「………」

「つい1週間前か?仕事帰りに会ってきた。まったくにこにこしやがって、頭にきて明日また会って今度こそ一言…」

「ちょっと!!!」


勢いよくテーブルに置いたカップから中身が溢れた。

羽生はそんな遥を不思議そうに眺める。


「なんだいきなり」

「アンタ本当に衛の事嫌いなのよね?」

「?大嫌いだ」

「その割に、よく会ってるじゃない」

「そうか?」

「あたしより電話してるみたいだし…」

「おい何が言いた…」


羽生の動きが止まる。やっと彼女と同じ考えにたどり着いた様で、何とも言えない表情をした。


遥が少し、後退った。


「!違う!俺とアイツはそういう関係じゃない!」

「ほー…そういう関係じゃないならどういう関係なのかしら?」

「だから違う!そんな目をするなー!!」



ぎゃあぎゃあと騒ぐ2人の声が、夜の署内に響いていった…。




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