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「不公平じゃない?不公平よねえ、」



まるで納得がいかない様に遥は繰り返す。ゆったりとしたベッドの隣、ぼんやり灯る明かりの下でハードカバーの本をぺらりと捲る衛は、ええ、とか、そうですね、なんて曖昧な返事をして誤魔化している。




「──大体、毎日同じご飯食べて同じように動いても…むしろあたしの方が絶対活動的な生活送っているのに、気を抜くとどんどん増えてくってなんなの?とっても理不尽、ずるいわ」




紙の擦れる音。
眼鏡を外し、目頭を押さえる。




「例えばパスタなんか食べたとするでしょ?あたしがキノコの和風パスタでアンタが濃厚カルボナーラとか、」


「…私も和風パスタでいいです。しつこい味は苦手で」


「アンタの好みはどうでもいいの!…とにかく、そんな感じで食べたとするでしょ。2人で。でもちょっと経つとあたしだけ太ってる!なんでよう…」



枕に顔を埋め、大きな素振りで低く唸る。しばらくそうしていると、遥はゆっくりと頭を挙げて、




「…聞いてる?」


衛を睨み付けた。
彼はまったく臆する様子も無く、



「聞いていますよ」


と短く返す。



「聞いてないじゃないの…」



がっくりと項垂れる遥の腕が衛の肩に乗せられて、そのまま滑り落ち、柔らかい服の生地を伝っていく。



「骨張ってるわ」



そのままするりと彼の腰に抱き付いた。



「──寝ましょうか、」


本が閉じられ、ぱちりという音と共に部屋が暗闇に包まれる。衛がそっと彼女の頭を撫でると、微かにシャンプーの匂いがした。



「…苦しいわ」


「温かいので。眠くなると温かくなりますね」


遥は、と呟いた後、


「先程の話の続きでもしましょうか?」


そっと付け加えた。


「…意地悪ね。しないわ…どうせ…聞いて…」


徐々に言葉は小さくなり、やがてそれは規則的な寝息へと変わっていった。


「……何も問題など無いのですよ」


「私が貴女をすきという以外は」


彼の声だけが掠れて響き、やがて消えた。


「──おやすみなさい」



窓に目を移せば、ぼんやりと湿ったようなまるい月が、ゆっくりと雲から顔を出し始めていた。





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2011/01/03

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