blue rose bud
□2nd.bud 隊長として
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「今、戻ったぞ。」
「あっ、お帰りなさい、珀栄。」
珀栄が執務室に戻ると、いつもと変わらぬ笑みを浮かべて、焔が言った。
「珀栄、どこ行ってたの?由羅がかなり怒ってたよ。」
動かしていた手を止めて、不適な笑顔で樹里が言った。
「ちょっと野暮用でな。そういや、由羅は?」
珀栄が狭い執務室内を見回しても、本人の姿は見当たらなかった。
「由羅なら、十二番隊へ行きましたよ。」
「喜助のとこか。何でまた‥‥‥?」
「さぁ?珀栄お仕置き用の拷問器具や、サボり防止用器具でも、作ってもらってるんじゃない?」
さらりと言われた、樹里の冗談に聞こえない言葉に、珀栄は血の気が引いていくのを感じた。
「そ‥‥‥‥そんなこと無えだろ。幾ら由羅でも、流石にそこまでは‥‥‥‥。」
「あら、私がどうかしたの?」
急に後ろから聞こえた、聞き慣れた声に、珀栄の体は、金縛りにあったかの様に硬直した。
「珀栄、随分とお早いお帰りですね。どちらへ行かれていたんですか?」
優しい笑顔を浮かべている由羅は、まるで聖母の様であったが、滲み出ている黒いオーラが、聖母のイメージを見事に打ち砕いていた。
「ち‥‥ちょっと、気分転換に;;;そ‥‥‥それより、由羅こそ何処に行ってたんだ?;;;」
「あら、樹里から聞いたんじゃないんですか?十二番隊へ行っていましたよ。珀栄お仕置き用拷問器具を作ってもらうようにお願いしに。」
「‥‥‥‥‥由羅(滝汗)」
「というのは冗談で、書類を届けに行ってましたの。」
心底悪い冗談を言われ、若干硬直状態が続く珀栄に、由羅は静かに微笑みかけた。
「なぁんだ。拷問器具だったら、面白かったのに‥‥‥‥。」
「怖いこと言うな、樹里。」
珀栄が樹里にそう言うと、由羅はふぅっと溜め息を吐いた。
「で、話を元に戻しますけど、珀栄はどちらへ行ってましたの?」
静かに問い掛ける由羅からは、再び黒いオーラが放たれていた。
「‥‥‥‥‥東流魂街に。」
珀栄が頭をかきながら言うと、由羅は黒いオーラを放つのを止め、眉を顰めて言った。
「東流魂街‥‥‥?昨日の霊圧ですか?」
「ああ。どうしても気になってな。由羅、焔、樹里、悪いんだけど、俺、今日から仕事のサボりが激しくなるわ。」
「どういうことですか?珀栄。」
珀栄の言葉に、焔が聞いてきた。
「由羅なら、わかるんじゃねえのか?」
珀栄がそう言うと、はっとしたように、由羅が言った。
「珀栄‥‥‥‥。もしかして、見つけたの?」
「流石、由羅。仰る通り、見つけたよ。」
「そう‥‥‥‥。とうとう見つけたのね‥‥‥‥。」
「由羅、何?どういうことなの?見つけたって、一体何を?」
状況が全く理解できていない樹里が言った。
「珀栄、ここからは、貴方が説明することよ。ちゃんと二人に説明して!」
「ああ、わかってる。」
珀栄は、一呼吸置いてから話し始めた。
「お前達もわかってるとは思うけど、俺の命はもう長くない。」
その場に居る全員の顔が、一気に険しくなった。
舞蒼隊の者は、皆知っていた。
珀栄は、不治の病を患っているということを‥‥‥‥。
そして、その病は、確実に珀栄の体を蝕み、命を削っているということを‥‥‥‥。
「それで、俺が舞蒼隊隊長として、死ぬまでにやらなければいけない、最後の仕事があるんだ。
それが、俺の後継者、つまりは二十一代目零番隊隊長を探し出すことなんだ。」
「「なっ!?」」
珀栄の言葉を聞いて、焔と樹里は驚きを隠せずにいた。
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