人魚姫|原作END
□指先が掠めた本音
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式が近づき、慌ただしくなる城内
その中で静かな空気を纏う彼女
俺に気づき、微笑みを向けるお前の表情は
あの日の人魚を思い出させる
彼女に愛しい人魚の事を話す
出会いと別れ、再会…幼い彼女は俺に驚いたのか逃げてしまった事、その事を謝りに会いに来てくれた事、一緒に居た姉の人魚が冷たかった事
お前は何故か、困ったような表情で恥ずかしげに笑っていた
「あの時に出会った人魚が好きなんだ」
出来るなら、彼女に直接伝えたい言葉
その言葉を聞いたお前は、微かに頬染め…いつもと違う曖昧な微笑みを浮かべた
そっ… と、その頬に伸ばした指先
重ねられた白く細い指
お前の髪を指先が掠めた
「くすぐったい」と言いたげに細めた瞳に、俺を映す
僅かに顔を逸らせば、
いつもの優しい微笑みを浮かべて、声無く笑う
その仕草が彼女と重なる
思い出される愛しい人魚
彼女に会いに城を抜け出した
もう一度会って、話をしたいと思ったんだ
伸ばした指先、触れた頬、暖かくどこか冷たさを含んだ肌
お前が彼女であれば、それ以上に何を望むと云うのだろうか
指が掠めた心、溢れた想い、叶わぬ望み
愛しい人魚
20090414