人魚姫|原作END

□泡沫、海に溶けて
1ページ/1ページ



あの子は王子と出会って、今まで見せなかった表情をするようになった

自分では気付いていなかったみたいね

声を失って、いえ…命までも失ってしまうかも知れないのに

あの子を人の姿を望んだ

叶うかも分からない願いの為に


毎日毎日、あの子の姿を見に行った

声はなくても元気に過ごしてるみたい


あの子が幸せそうに笑うから
連れ戻せなくて

あの子が幸せで居られるなら
そう…思ったのに


「王子が結婚するって本当なの!?」

単なる噂…そう思っていたけど、貴女は小さく頷いた

王子の結婚が意味するのは、願いが叶わず貴女の命が終わるという事

それなのに…

どうして、貴女は笑っているの


海の魔法使いを問い詰めて、あの子を人魚に戻す…命を助ける方法がある事を知った


方法を伝え、短剣を手に握らせる

俯いて見えない表情

白い手が微かに震えている

貴女を呼ぶ王子の声

あの子は短剣を隠して駆け寄っていった


これで、大丈夫…

そう…思っていたのに


涙は真珠に、声は音に、
あの子は泡に変わってしまった

王子の言葉は間に合わなかったみたいね


泣きそうな表情で微笑んでいた
あの子の表情だけが、私の中に残り続ける





20090414

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ