人魚姫|原作END

□不器用な優しさ
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―――…3年

王子と再会してから経った時間は、あの子の想いをただ募らせるばかり

あの子は…報われない想いがある事を知らない

…だから、願うのでしょうね

まだ、少し躊躇いがあるみたいだけど


近い未来に…―――


「…貴方に、頼みたいことがあるの」

人魚の国の外れにある彼の隠れ家とも言える場所

"海の魔法使い"なんて言われて恐れられているけど

「えー…なぁにー?」

何を基準に選んでいるのか分からない小瓶の数々を、机に並べながら返事を返す彼の

一体、どこが恐いのかしらね

「カバネー?」
どうかしたのー?なんて言って、顔を覗き込んでくる彼を軽く押し返す

「フェイの事で、お願いがあるのよ」

貴方なら…いえ、貴方にしか叶えられないことなの

「方法は任せるわ」

あの子の願いを叶えてあげて


―――…人間の姿を望む


それが、"幸せ"へと繋がるなら

少しでも

素直にその背を押せたらいいのに

口から出るのはあの子を止める言葉だけ

だから


「行ってらっしゃい」


その言葉を言えない代わりに、何も知らない振りをして


ただ、黙って見送るわ



次に会うときは、いつものように…





20090604

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