人魚姫|原作END

□わがままな願い
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暗い砂浜

冷たい波の音

まだ深い闇色の星空に流れる小さな歌声


「フェイ…」

歌が途切れ、声は私を呼んだ



姉さんが教えてくれたのは、人魚に戻る為の唯一の方法


渡された短剣を見つめる私を見る姉さんの表情は暗く

「出来るわね…?」

泣き出しそうな声で問う


返事が出来ずに俯いていると

「フェイ…ここに居るのか?」

ふと、聴こえた王子の声

部屋を抜け出たのがバレてしまったみたい

「…行きなさい」

表情を曇らせたままの姉さん


「こんな夜中に何をしてたんだ?」

心配そうに聞いてくれる王子に

「なんでもない」という意味を込め、微笑む


「あまり…心配を掛けるなよ」

優しく髪を撫でる王子の掌から伝わる暖かな温度


王子を必要とする人は沢山いて

「傍に居たい」という勝手な願いで人になった私の為に、彼を奪う事は出来ないから


そう…これは私の


"わがまま"



ごめんなさい、王子

『このまま…俺の傍に』

嬉しかった言葉

でも

叶えられない


ごめんなさい、姉さん

『ずっと一緒よ!フェイ!』

幼い約束

私は

守ることが出来ない



ごめんなさい


自分の為だけの勝手な"わがまま"


ごめんなさい


二人を振り回した私の"わがまま"


でも


ありがとう


二人の傍に居させてくれた"わがまま"



サヨウナラ



(ずっと傍に居たい)


そのだけは決して許されない





20090813

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