人魚姫|未来END

□心を繋ぎ止めた想い
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彼に触れようと伸ばした手

だけど

彼の指先に触れる瞬間
私は、泡へと変わっていった


消えてしまっても、意識は残るの…?

深い海の底にいるかのよう

ただただ暗く静かな場所

海の中に居る感覚

けれど

触れたものには冷たさも、温かさも感じられない

温度のない場所

「っ………ッ」

頬を伝う泪だけが熱を、指に落ちた真珠だけが冷たさを含む


私は3年間…なにをしていたんだろう

彼は他の人間とは違う…王子は、私達(人魚)を捕らえる事なんて考えていなかったのに

ただずっと、想ってくれていたのに

あんなに近くに…触れることが出来るほど傍に居たのに

『あの時に出会った人魚が好きなんだ』

彼の言葉が嬉しくて、人間にならなくても
彼に触れられたかもしれない

人間とは違う形で彼の傍に居られたかもしれない

私が、人間でなくても…彼の傍に

『―――っ!』

あの時、王子は何を伝えようとしたの?

あの…言葉は

『………っ!』

「ッ……っき、私……!」

幾度となく繰り返される王子の言葉

『あの時に出会った人魚が好きなんだ』

「 好き。…私、も……王子が好きっ…」

私の言葉は

温度のないこの場所に静かに消えていった





20090424

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