人魚姫｜未来ＥＮＤ
□確かな温度
1ﾍﾟｰｼﾞ/1ﾍﾟｰｼﾞ
手の平で煌めく砂は
肌を撫でる風に浚われた
涙の真珠
何が起きたんだ…？
空に流れて揺らめき輝く泪
今の光は…？
太陽の輝きと共に海面へと降り注ぐそれは
愛しい彼女を感じた
唯一の…―――
「………」
キラキラと、煌めく海の底深く
触れらる程に近くに感じたお前は
「…何処にも居ないのか…？」
確かに感じた
間違える筈もない
紛れもない"お前"の温度
「…本当に、居ないのか…？」
弱々しく、小さな声
するり、と頬を掠めた潮風に
背を押されるよう
海から離れ行く
「………」
此処に来ても、会うことはない
此処に居ても、会える筈がない
「……フェイ」
理解、していても
お前に伝えられず
もう触れる事すら出来ない
「未練がましいな…俺も」
最期の刻
泡と変わり行く中でさえ
淡い微笑みを向けたお前の
差し出した白く細い腕
その手を掴んでいたら…
「待って！！」
後ろから聴こえた声
それは
「フェイ…？」
あの日失った
愛おしい彼女の声
「王子…！」
背に回された腕
囁くように透明な声
「待って、下さい…！」
伝える為
必死に言葉を紡ぐ唇
「私…まだ、貴方に返事を…返してない…」
お前は
俺の言葉に応えてくれるのか
「フェイ…」
一度、お前を失ってしまったのに
そっと、以前と変わらぬ小さな身体を抱き返しめる
「私は……、私も…」
たどたどしく、迷いながら
それでも言葉に変わる声
「ずっと…」
伝えられる言葉を期待して、落ち着かず騒ぎ出す心
それでも
俺の想いは正しく伝わっていたのか
それすらも分からず
ただ静かに、彼女が導く答えを待つ
「ずっと…貴方の傍に、居させて下さい」
予想と違う…期待を叶えた優しい言葉
そっと、確かめるように触れた頬は
柔らかく優しい温度を宿していた
左手を添え、顔を上げる
泣きそうな瞳と交わる視線
今、此処に居る
触れられる距離に
夢でも幻でもなく
生きて、傍にいる彼女を
「あぁ、頼む」
離したくはない
「俺の傍から…離れないでくれ」
目元に口づけて
一滴、流れた涙を追い
あの日の続きを
そっと、静かに
淡く染まる唇にキスを
20090710