人魚姫|未来END
□目覚めの言葉
1ページ/1ページ
ふっと目が覚める
何がある訳でもなく、ただ目が覚めた
部屋には明るい光が容赦なく降り注ぐ
珍しい、いつもなら呆れたような顔をした家臣や、何故か楽しそうな女中が起こしに来るのに
特に来て欲しい訳ではないが、来なければ来ないで、何か企んでいそうで怖い
そんな事を考えながら隣を見れば
「すー…」
普段よりもずっと幼い表情で、小さな寝息を立てて眠るフェイの姿
「(…可愛い)」
起こさないように頬を撫でると
「…ァ…ッスさ、…」
淡い色の唇から控えめな声に呼ばれた
起こしてしまったのかと声を掛けようと、口を開く前に
「やめて下さっ…!ダメっ…アースさん、…ぃやです…っ!」
「っ!!?」
俺はお前の夢の中で何をしているんだ!?
思った言葉は声にならず、うわごとのように「ダメ」「イヤ」「止めて」と言いながら、俺の名前を呟いているフェイから視線を逸らずにいる
「だめ…アースさん、やめて…」
「フェ…フェイ?」
微かに震える言葉とシーツを握りしめる手
何をしているのか分からないが、フェイがうなされているのは夢の中での俺の言動が原因らしい
起こしたほうがいいのか、というか、いっそのこと起こしてしまいたい
そう思い、伸ばした手が届く前に
「ダメっ…!やめて下さいアースさん!サメの踊り食いなんて危険ですっ!!」
「どんな夢を見てるんだ、お前は!?」
「ふぇっ!!?」
叫んだフェイに思わず大声で返してしまい
その声で飛び起きるように目を覚ましたフェイは、泣きそうな顔をして俺を見ている
「あー…と、すまん。驚かすつもりはなかったんだが、うなされていたから…」
「…アースさん…?あれ…今のは…?」
まだ寝惚けているのか、ゆっくりと独り言のように口を動かしている
「…全部、夢だ」
「よかった…」
俺の言葉に安心したのか、へにゃりとあまりにも無防備に微笑むから
「あ…アースさ、ん…?」
ちゅっ とわざと音を立てて、白く柔らかな頬にひとつキスを落とした
(ところで、俺は一体お前の夢の中で何をしていたんだ?)
(その…アースさんが突然、「サメを踊り食いしてみたい」と言い出して、海に飛び込もうとしていたので止めていたんです)
(なんというか…すごい夢、だな)
(…そうですね)
20100110