小説置き場

□陽射しの中を吹き抜けて
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カーテンに陽の光を遮られた薄暗い部屋

そっとベッドにある小さな膨らみに近付く

自分の体重で微かに軋んだベッドに構わず、目の前にある小さな耳に唇を寄せた

「…フェイ?」

囁くように呼んでも、起きる気配はない

普段なら近付いただけで目を覚ますが

「…ん……っー…」

静かに眠り続ける彼女の、瞼や頬に触れるだけの軽いキスを繰り返した


(まだ、大丈夫か…?)

疲れているのだろう、無理に起こさず、そっとして置いてやればいいのに

そうも思う。が、これ程までに無防備な彼女に悪戯出来る機会はそうそうない


「…悪いな」

言葉だけの謝罪をし、行動を起こす

彼女の小さな身体に覆い被さるようにして、薄く開かれた唇をゆっくりと塞いだ


「…っ……んぅ…?ぁ、…ふっ…?」

苦しそうに声を漏らし、弱々しく押し返されたから、少しだけ離れて

「おはよう、フェイ」

「…はぁ…おはよう、ございますぅ…」

何事もなかったように挨拶

ゆっくりと呼吸を整えている彼女は、まだどこかぼーっとしている

「…起きてるか?」

確認の為に声を掛けると、布団を口元まで上げて、小さく顔を横に振った

「すいません…もう少し、だけ…」

すでに言葉の途中で瞳を閉じている
彼女が眠い理由は分かっているし、眠気には抗い難い事も知っている

だが、

「いや、おい。寝るな」

それとこれとは話が別だ

「フェイー、起きろー」

「…ゃ……」

一度ベッドから降りて、彼女がしっかりと握りしめている掛け布団を奪い取る

睨まれたが構わずに、布団を取り返そうと伸ばされた両手を掴み、拘束して

「早く起きないと、…襲うぞ?」

耳元で低く、囁いた

今起きなければ、お前は俺に何をされても


何も文句は言えないからな


 
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