小説置き場

□形勢逆転!
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「なんのつもりだ、コレは」

ごく普通の一日が始まり、朝食を摂った後に仕事を片付けて、少し休憩しようと思ってリビングへ行った
そしたら、俺に気付いたフェイがコーヒーを淹れてくれた

ここまではいつもと変わらない

そう、ここまでは

「箱の中身はなんでしょう」

ソファで寛いでいたら、いつもと変わらぬ微笑みにどこか楽しげな雰囲気をまとったフェイが、大きく「?」が描かれた箱を差し出してきた

「なんだ、突然」

「ちょっとした息抜きです。当たったら、アースさんの言う事を私の出来る範囲ですが、何でも聞いて差し上げますよ」

「…なんでも?」

「はい。なんでも、です」

なんでも、か
男にその言葉を使う危険性を考えていないんだろうか、それとも、純粋に信頼されているから…なんだろうか

「ちなみに、外したら?」

「え?えと…そうですね。アースさんが私の言う事をひとつ聞く、というのは?」

フェイの言う事なら、罰ゲームじゃなくても聞くんだがな…というより、いつでも言って欲しいと思うけどな

「そうか。なら、やってみるか」

「はい。では、どうぞ」

フェイの事だ、危ない物は入れていないだろう
そう思い、なんの躊躇いもなく箱の上部に開けられた穴に手を入れた

「っ!!!??」

が、中身に手が触れた瞬間に背中をぞくりとしたものが走り抜けた

「どうかしましたか?」

「え、いや…なんでも、ない」

きょとんと見上げてくるフェイに、なんでもない振りで返す

ぞわぞわと背中に残る感覚

アレだ、あの感覚に似ているんだ

「中身分かりましたか?」

「いや…フェイ、ひとつ聞きたいんだが、生き物じゃないよな…?」

「…………………秘密、です」

なんだその間は、凄く嫌な予感がするぞ

「そうか…」

触れたのはほんの一瞬だった。だが、生き物という感じはしなかった…筈だ

いや、だけど…背中に残るこの感覚は

「アースさん?」

相手はフェイだ。嫌がらせとしか言い様のないものを入れる筈がない、と思いたい
が、正直この生理的に受け付けないものと、意図せずして対峙してしまった時のものに似ている感覚は一体なんだ…?

「安全なもの、なんだよな?」

「…なんですか?さっきから質問ばかり」

つい聞いてしまった事に、フェイがしゅんとうつ向いて悲しげな瞳を向けた

これでは、フェイを疑っている事になる

「すまん、つい」

「私が危ない物なんて入れる訳…」

ガサガサ、ゴトゴト

「!?…な、なんだ?今の音は」

フェイの声を遮るように、聞こえた音

箱から聴こえた、ような…?

「……………。」

「無言で目を逸らすなぁ!なにか言ってくれ!というか、何を入れたんだ!?」

ついにはカタカタと小刻みに動き出した

お前はなにを入れたんだ!?

「アースさんの負け、になってしまいますよ?いいんですか?」

「言っておくが…もう一度その箱に手を入れる勇気はないぞ、俺には」

普段なら、可愛さのあまり抱き締めている上目遣いのフェイにさえ構っていられない程、俺の意識は箱に向いていた

何故か奇声みたいなものも聴こえてきたし

「…アースさん」

「な…なんだ?」

スッとフェイが声のトーンを落とした

一歩詰められた距離、細められた瞳には妖しげな光が宿っている


 
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