小説置き場

□眠り姫の起こし方
1ページ/1ページ



「ん〜…?」

右肩に掛かる重みと温かさ
何かが頬を掠めるくすぐったさに、眠い目を擦りながらゆっくりと開くと

「…すー……」

途中で眠くなったのか、本を膝に乗せて、規則正しく小さな寝息を立てるフェイの姿

動いたら起こしちゃうかな

そう思ったけど、喉が乾いて寝る前にフェイが淹れてくれた紅茶に手を伸ばした

「ん、んぅ…」

「……フェイ…?」

起こさないよう気を付けたつもりだけど

「ぅ…ん〜…」

どうやら余程疲れているらしい

寝返りを打って、反対側へと倒れただけ
膝に乗っていた本が音を立てて落ちた


なんとなく、その様子を眺めていて「お姫様みたいだ」と思った

白い肌と淡い色合いの髪や服
まるで童話に出てくるお姫様のようだ


すっかり冷めきっている紅茶を飲みながら、そんなことを考えて

「んー…、そうだ」


ふと思い付いた、自分の柄ではない行動
そっと彼女に手を伸ばした


「……?ぁ…れ?」

不思議そうに開かれた瞼が、眩しさに細められ、その奥の瞳に僕を映す

寝惚けているらしい彼女は、自分の唇に白い指を添えて、疑問符を浮かべている

「おはよう、フェイ」

「おはようございます。…あ、紅茶新しいのを淹れて来ましょうか?」

僕が持っていたカップを視界に捉えると、ポットに手を伸ばしながら尋ねてきた

「うん、あと…なにか食べる物も一緒にお願いしていい?お腹がすいて…」

どれくらい寝ていたか分からないけど、夕飯はとっくに過ぎてる…気がする

素直に告げた言葉に、彼女は小さく笑った後「分かりました」と告げて台所へ向かった



コトンと、ポットをシンクに置いて、そっと唇を指でなぞる



(さっき、ほんの少しだけ紅茶の味がしたのは、一体なんだったんでしょう?)





20100811

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ