小説置き場
□芽生えた嫉妬の隠し方
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カーテンの隙間から届く陽射し
眩しさに腕で顔を隠し、目を開いた
時計を見れば、12時を回る頃
まだ、眠気は引かないがリビングへ向かう
寝たのは何時だったか、フェイが朝食を用意する前に声を掛けてくれた気がする
「あ、おはようございます。アースさん」
「おはよう…ん?」
部屋に入ると同時に掛けられた声
視線を向ければ、ソファに座り柔らかな笑顔を向けているフェイと
「どうかしましたか?」
「いや…来てたのか、と」
彼女の膝に頭を乗せて寝ているマクモの姿
「アースさんに用があったみたいなんですが、待ちくたびれて寝てしまったんです」
「…そうか」
いとおしそうに細められた瞳をマクモに向けて、起こさないように声をひそめて話しながら、優しく頭を撫でている
まるで親子のようだ
一体、いつからそうして居たんだ?
「アースさん?…!」
どうやら顔に出ていたらしい
不思議そうに顔を上げたフェイの額に、誤魔化すように触れるだけのキスをした
「何ですか、急にっ…!」と、フェイが声を上げると同時にマクモが小さく身動ぎ、慌ててフェイは口をふさぐ
二人してマクモを見下ろして、何ごともなく寝息を立てる様子に一息つく
「危なかったな」
「…アースさんのせいですよ」
軽く言うと、上目遣いに睨まれてしまった
「そう言うなよ」
「っ!!アースさんっ…!」
フェイがマクモを気にして動けないのをいいことに、ギリギリまで顔を近付ける
「騒ぐとマクモが起きるぞ」
「じゃあ、離れてっ…アースさっ…!」
耳まで赤く綺麗に染まり、マクモの様子を気にしながら弱々しく抵抗をする
「断る。…静かにしろ」
「っ…!」
まだ何か言いたそうに口を開こうとするが、構わずに唇を寄せる
「んー…?」
「っ…!!?」
だが、唇が触れる前にマクモが目を覚ましてしまい、仕方なくフェイから離れた
「…二人共なにしてんだ?」
「いえ、何でもありませんっ…!おはようございます、マクモさん」
不思議そうな顔で俺達を見ているマクモに、頬を染めたまま笑顔で誤魔化す
「おう、おはようフェイ!あ、アース、新しい服のデザイン考えたんだ!」
特に俺達の事は気にならないらしく、俺に気付いたマクモは、意気揚々とテーブルに置かれていた鞄から紙の束を取り出し始めた
「見てくれ!」と、満面の笑顔で差し出されたデザインと、マクモの顔を交互に見て
「…先に、シャワーを浴びてくる」
用件のみを言って風呂場に逃げる
するとほぼ同時にマクモが不満の声を上げるが、聞こえないフリをした
熱めのシャワーを浴びながらため息を吐く
ほんの少し見ただけの、斬新や独特の域に収まらないマクモのデザイン
アレは、寝起きに見るものじゃない
フェイにキスをし損ねた事を、簡単に忘れるくらいの衝撃だった
(あのデザインを全部見るのに、一体何時間掛かるんだろう…)
20100814