小説置き場

□芽生えた嫉妬の隠し方
1ページ/1ページ



カーテンの隙間から届く陽射し
眩しさに腕で顔を隠し、目を開いた

時計を見れば、12時を回る頃

まだ、眠気は引かないがリビングへ向かう
寝たのは何時だったか、フェイが朝食を用意する前に声を掛けてくれた気がする

「あ、おはようございます。アースさん」

「おはよう…ん?」

部屋に入ると同時に掛けられた声
視線を向ければ、ソファに座り柔らかな笑顔を向けているフェイと

「どうかしましたか?」

「いや…来てたのか、と」

彼女の膝に頭を乗せて寝ているマクモの姿

「アースさんに用があったみたいなんですが、待ちくたびれて寝てしまったんです」

「…そうか」

いとおしそうに細められた瞳をマクモに向けて、起こさないように声をひそめて話しながら、優しく頭を撫でている

まるで親子のようだ

一体、いつからそうして居たんだ?

「アースさん?…!」

どうやら顔に出ていたらしい

不思議そうに顔を上げたフェイの額に、誤魔化すように触れるだけのキスをした

「何ですか、急にっ…!」と、フェイが声を上げると同時にマクモが小さく身動ぎ、慌ててフェイは口をふさぐ

二人してマクモを見下ろして、何ごともなく寝息を立てる様子に一息つく

「危なかったな」

「…アースさんのせいですよ」

軽く言うと、上目遣いに睨まれてしまった

「そう言うなよ」

「っ!!アースさんっ…!」

フェイがマクモを気にして動けないのをいいことに、ギリギリまで顔を近付ける

「騒ぐとマクモが起きるぞ」

「じゃあ、離れてっ…アースさっ…!」

耳まで赤く綺麗に染まり、マクモの様子を気にしながら弱々しく抵抗をする

「断る。…静かにしろ」

「っ…!」

まだ何か言いたそうに口を開こうとするが、構わずに唇を寄せる

「んー…?」

「っ…!!?」

だが、唇が触れる前にマクモが目を覚ましてしまい、仕方なくフェイから離れた

「…二人共なにしてんだ?」

「いえ、何でもありませんっ…!おはようございます、マクモさん」

不思議そうな顔で俺達を見ているマクモに、頬を染めたまま笑顔で誤魔化す

「おう、おはようフェイ!あ、アース、新しい服のデザイン考えたんだ!」

特に俺達の事は気にならないらしく、俺に気付いたマクモは、意気揚々とテーブルに置かれていた鞄から紙の束を取り出し始めた

「見てくれ!」と、満面の笑顔で差し出されたデザインと、マクモの顔を交互に見て

「…先に、シャワーを浴びてくる」

用件のみを言って風呂場に逃げる

するとほぼ同時にマクモが不満の声を上げるが、聞こえないフリをした



熱めのシャワーを浴びながらため息を吐く

ほんの少し見ただけの、斬新や独特の域に収まらないマクモのデザイン

アレは、寝起きに見るものじゃない
フェイにキスをし損ねた事を、簡単に忘れるくらいの衝撃だった



(あのデザインを全部見るのに、一体何時間掛かるんだろう…)





20100814

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ