小説置き場
□それは他人事ではなく
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「じゃあ、ほら…口開けて?」
「え…?で、でも…」
「いいから早く、ね?…じゃないと、誰か来ちゃうかもしれないよ?」
「っあ、わ…分かりました」
台所へ続く扉越し
中から聞こえてくるキリクとフェイの会話に、ドアノブに伸びた手が止まる
別にただ二人が話しているだけなら、何も気にすることはないんだが
「んっ!?んーっ!!」
「あぁ、ごめん。…苦しかった?」
ごく自然な会話では聞こえるはずのない、フェイのくぐもった声や
「やっ!ふぃりふひゃん…っ!もぅ、くゆひぃ…れふ」
「んー…やっぱり大きかったかな?フェイは口が小さいし」
何かに邪魔され舌ったらずな言葉遣い、どこか甘く艶のある声が聞こえれば、躊躇いもなく扉を開く事は出来なくなる
苦しい?大きい?…フェイの口には収まりきらないナニかが入れられている、ということらしいが
想像をして、振り切る
ここは台所だ。そのうえ、いつ誰が来るかも分からない場所なんだ
現に、俺がいま此処にいる
あり得ないと、何度も脳裏を過る想像を振り払い、否定する
キリク、お前はフェイに何をしてるっ!?
だが、聞こえてくるのは想像裏切る、否、裏付けするような声や台詞
「あ…!も、むりれふ!!」
「無理じゃない。ほら…ちゃんと舌を使って舐めないと、苦しいのはフェイだよ?」
「れもっ…!!んぐっ!!?」
「でもじゃない。欲しがったのはフェイなんだから、ちゃんと味わって」
悲願するフェイの言葉を一掃して、何をしているのか楽しそうなキリクの声
フェイが欲しがった?何を?
「んっ、んん…っ、ふ、はぁ…」
「もう疲れた?なら無理しないで、止めたっていいよ」
「ふっ…もぅ、ふほし…らけ!せっかく、ふぃりふひゃんが…」
「そう?ま、フェイがやる気あるって言うなら、止めないけど…」
二人の会話に、何度払ったってきりがない想像が膨らんでいくばかりだ
もう想像通りだろうと、無かろうと知らん
純だろうと、不純だろうと、この家に暮らす最年長者として、意味深な会話を放置するわけにはいかない!
「何してるんだ!?お前らは!!」
意を決し、扉を開いた
そこには…