小説置き場

□その日まで
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辛さと苦しさを隠し、影を落とす表情

何を見ているのか分からない、虚ろな瞳

「………」

声を発する事もなく、何処かを見ている

此処ではない場所を

「アースさん」

手を伸ばし、頬に触れ、視線を合わせる

「アースさん」

もう一度、さっきよりも強く呼んだ名前

「………」

少し下げられた顔、外れた視線

「アースさん、私は…」

膝立ちでいる私からは座り込む彼の表情は見えず、何を考えているかも分からないけれど

痛みも悲しみ言葉にしないで、心の奥に無理矢理押し込めて、一人で耐えようとしているのなら


「私が…」

貴方が罪を償い

全てが貴方を許すまで

貴方が貴方を許せる日まで

貴方が一人でないように


「私が、貴方を許します」


傷も、痛みも、苦しみも、全て含めて今の"貴方"があるのなら

その全てごと、私は貴方を抱きしめる


いつになるのか分からない。けれど、必ず訪れる筈の未来


「私が、貴方を許します」

それは『誓い』に等しい想い

「貴方を許します」

何度も何度も、繰り返し伝える言葉

貴方の背で、祈るように組んだ指

「アースさん」

全てが許されるその日まで





20090930

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