小説置き場

□雪に咲く紅い華
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少しづつではあるが暖かい日も増え、来月は暦上の春となる

2月も終わりが近づく


本から顔を上げると、時計は今日が終わるまで10分しかない事を示していた

「私に出来るでしょうか…」

連日徹夜続きだったアースは、先に部屋に戻って休んでいるはず

「…アースさん…?」

本に栞を挟み、アースの部屋へ
一度大きく息を吐いて、そっと音を立てないように扉を開き、控え目に声を掛けた

声も音も返ってこない

カーテンが開けられたままの部屋に、秒針の音が響いているだけ

少しづつ、今日が終わる

「……っ…」

部屋に入って扉を閉めた

自分の心臓の音が、煩いくらいに響く

仰向けに眠る彼に覆い被さるようにして、ベットに上がる

ぎしっとベットが軋むが、彼が起きる様子はなく眠り続けている

相手が寝ててもいいんでしょうか

先ほど読んでた本には書いてなかったし、とりあえず書いてあった通りに進める為、彼の耳元に顔を寄せた

「…っアースさん、」

「なんだ?」

「ぇ、は…?」

いま「なんだ?」って、言いました…?

寝てましたよね、気のせいですよねっ!?

「フェイ」

「んゃ…!」

混乱して動けずにいると、耳元に生暖かいものが触れて思わず退く

「何で逃げるんだ」

アースの不満そうな声に応える余裕はなく
右耳を押さえながら身体を起こし、彼のお腹の上に跨がる状態となった

「ななな何したんですかっ!!?」

「何って…舐めただけだが?」

「舐めただけって…っ!」

ビックリしたんですよ!?寝ていると思ったら起きていて、しかも耳元を舐められるなんて思わないじゃないですか!!

言いたい事はたくさんあるけど、全部ちゃんとした声にならない

「っと、…フェイ。続きはしないのか?」

フェイが後ろに倒れないよう支えながら上半身を起こし、戸惑いを宿す瞳を捉える

「え…続き、ですか…?なんの…って、え、なっ何で脱がせてるんですっ!?」

「なんの?こんな恰好で男の部屋に来るなんて、襲われに来たようなものだろう」

部屋に戻る前に見たときにはワンピースタイプのパジャマを着ていたのに、今はワイシャツ姿で白い脚を惜し気もなく晒してる

「…違うのか?」

問いながらも返事を聞く気はないらしく、手際よくボタンを外していく

「そ、それは…」

言葉に詰まり、視線を逸らす

襲われに来た訳ではない。だが、最終的にそう思われても仕方ないのかもしれない


 
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