小説置き場

□色とりどりに想い込めて
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「わぁ…きれいですねー」

テーブルの上に置かれたガラスの小瓶
リボンが掛けられたソレには、色とりどりの飴玉が入っていた

キラキラと、普段はあまり見せない幼い表情で見つめる姿が年上には見えなくて、気付かれないように隠れて笑った

「ひとつ食べてみる?」

「え、…いいんですか?」

蓋を開けて差し出すと、遠慮がちに声を返された。だが、フェイの視線はカラフルな飴達に向けられている

「いいよ。というか、元々君にあげるものだしね。だから、はい…口開けて?」

「ぇ…あ、あの…私、自分で食べれっ…」

「いいから、口開けて」

「…うゅ、…っんん」

手を伸ばし、折れてくれる様子のないキリクに、控えめに口を開く

コロンと、飴が口に入る

「どお?」

「…おいしいです」

口元に手を添えて、ふわりと微笑む

「そう、よかったね」

「?…はい」

何か含んだ答え、絶えず注がれる視線

なんとなく恥ずかしくて、俯いた

軽く瓶が振られ、コロコロと音が鳴る

「それ、なに味だと思う?」

瓶を傾けて、眺めながら聞かれた

なに味だろう?と、舌で転がしてみる
甘い…でも、決して過ぎることはない

「…ぇと、…んー…?」

飴に意識を集中しているフェイ
その隙に、彼女との距離を限り無く縮める

「フェイ、ちょっと顔上げて」

「ふぇ…?っ!!?」

目の前に居たことか、それとも、唇を掠めた舌にか…或いはその両方か
驚くフェイの耳元で

「味は企業秘密だよ」

特別な飴ではあるけど、ね
そっと囁いて、飴の瓶を渡す

「ふぇ、…え?キリクさん…?」

「あーでも、ハズレが入ってるから、気を付けて食べてね」

本当はハズレなんて入ってないけど、そう心の中で言葉を続ける

「え、ハズレって…な、なにが…?」

少し青ざめるフェイに

「食べてみたら分かるよ」

と黒い笑顔のおまけ付きで返す

飴と僕を交互に見ながら、おろおろと困惑するフェイの手の甲にキスをした


この言葉を聞いた君は

その飴を見る度に


「キ、キリクさっ…!」

「大丈夫。命には関わらないから!」



僕の事しか、考えられなくなる





20100314

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