小説置き場

□ラブレター?
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「なに書いてんだ?」

いつ起きたのか、読書中に一人用のソファで寝ていたマクモが、眠たそうに目を擦りつつ尋ねた

「んー…恋愛小説?」

「えー勇者の話じゃないのかー」

適当に答えたジャンクに、開いたまま置いていた本を持ち直して、マクモは子供のような不満そうな顔を向けた

「でも素敵ね!どんな話なの?」

一連の会話を聞いていたエニメニが、本から顔を上げて聞いた
純粋に興味があるのだろう

「そうだな…」

んーと口元に手を当てたジャンクの言葉を、期待に輝く瞳で見つめている

キリクも興味があるのか、カップに手を伸ばしつつ耳を傾けた

「占い師の女の子と小説家の恋物語かな」

一瞬、空気が止まった気がする

「え…それって、」

「まさか…」

二人はほぼ同時に、フェイを見た

当のフェイは、一人黙々と呪術に関する本のページを、一定のペースで捲っていく

「なんかフェイとジャンクみてーだな」

「…はい?」

マクモの言葉に、フェイは不思議そうな顔をして返事を返した。続きを読みながら聞いていたらしいマクモの発言を、自分が呼ばれたのだと勘違いしたようだ

「なんのお話ですか?」

「それがさ!ジャンクが書いてる話が、フェイとジャンクの事みたいだなって」

マクモとフェイの会話を聞いて、エニメニとキリクはジャンクに視線を送るが

「ラブレターの方が正しいかな?」

「本にするんでしょう!?」

「ジャンク、愛が重いっ!」

当然とも言えるエニメニのツッコミと、以前一冊の本になっているジャンク曰く『ラブレター』を見たキリクのツッコミを受け

「結構自信あるんだけど…」

「返されてただろっ!!」

子供のような…駄々をこねるように、二人の厳しいツッコミを受けながら、ペンを進め、文字を綴り話をまとめていく

「「………。」」

結果、何を言ってもダメだと、エニメニは読書を再開し、キリクは紅茶のおかわりを用意する為に立ち上がる


「…素敵ですね」

呟くように紡がれたフェイの言葉

マクモから話を聞いて(余計な事も言っていたが)、事の内容を理解したらしいが、

「小説のモデルなんて初めてですが…私でいいんでしょうか?」

頬を染めて、嬉しそうに照れたように笑うフェイの隣、楽しそうなマクモに「何を言ったんだマクモ」と、キリクとエニメニが視線で問いただす
モデルと云うより、そのまま使われてる
名前も容姿も性格も、『フェイをモデルにした占い師の女の子』ではなく、『占い師のフェイ』がそのまま登場するだろう

「興味ある?」

一番最初に読ませてあげるよと付け加え、執筆を続けるジャンク

「ありがとうございますっ…!」

花が綻んだような柔らかな笑顔で礼を述べるフェイと、その華奢な肩に手を乗せ、よかったな!と笑顔を向けるマクモ

実際にフェイが読んだら赤面くらいじゃすまないだろう、そんな事を思いながら、この三人にいちいちツッコミを入れていたらきりがない事を知ったキリクとエニメニは、互いに顔を見合わせ、

「………。」

しばしの無言。そして諦めたようにひとつ息を吐き、各々自分のしていた作業に戻る

「どんなお話になるんでしょう…?」

呪術の本を開き、それを読むには不似合いな微笑みで小さく呟くフェイに、ほんの少しだけ、罪悪感が沸いた気がした





20100331

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