ゆめ4
□僕のすきなひと
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本社で取材を受けていたらライターのお姉さんが笑った顔に少しドキリとした。俺の好きな女性のタイプなんてホントにいりますか?と返せばクスクス笑って「女の子は少しでも理想に近づきたいのよ」と余裕を見せられた。
「で、池田さんのタイプは?」
「…えー、と 可愛いひと、とか」
「結構面食いなんだねー」
「やっそういう訳じゃなくて、」
「彼女が可愛いんだね、」
「彼女じゃないっすよ!!好きなこ…」
しまった。ライターがニヤニヤしてる。いつもそうだ、俺はすぐに気持ちの中身を表に出す。この前村上にも言われた、顔に出すぎだって。いや、それはちょうムカつく後輩がいて…って何の話だよ。あたふたする俺をさぞ楽しそうに笑うライターに少し悪意を覚えつつ。あー早く村上帰ってこいよ!俺がこういうの苦手だって知ってんだろ!
「そんな怖い顔しないでよ、池田さん。」
「……別にしてませんよ。」
「今のは自爆よ?」
「誘導尋問です。」
「で、さっきの書いてもいい?」
「……あーも、いいっすよ。どうせ興味ないだろうし。」
「じゃあもっと聞かせてくださいよ。」
「…笑いながら聞かないでくださいよ。」
いい大人が片思いとか死ぬほど恥ずけーんすから。前置きもこのライターには通じなそうだ。ため息を落として煙草に火をつけた。ゆらりと紫雲が上がってすっと消えるのを見届けて、俺は頭を掻いて身を乗り出したライターに苦笑いした。
「…すっげぇ、可愛い娘です、よ。」
ポツリと落とせばさぞ愉快そうに笑って手元のテープレコーダーのスイッチを入れた。
僕のすきなひと
(それはみんなのすきなひと)