ゆめ4

□僕のすきなひと
1ページ/1ページ







本社で取材を受けていたらライターのお姉さんが笑った顔に少しドキリとした。俺の好きな女性のタイプなんてホントにいりますか?と返せばクスクス笑って「女の子は少しでも理想に近づきたいのよ」と余裕を見せられた。











「で、池田さんのタイプは?」

「…えー、と 可愛いひと、とか」

「結構面食いなんだねー」

「やっそういう訳じゃなくて、」

「彼女が可愛いんだね、」

「彼女じゃないっすよ!!好きなこ…」











しまった。ライターがニヤニヤしてる。いつもそうだ、俺はすぐに気持ちの中身を表に出す。この前村上にも言われた、顔に出すぎだって。いや、それはちょうムカつく後輩がいて…って何の話だよ。あたふたする俺をさぞ楽しそうに笑うライターに少し悪意を覚えつつ。あー早く村上帰ってこいよ!俺がこういうの苦手だって知ってんだろ!











「そんな怖い顔しないでよ、池田さん。」

「……別にしてませんよ。」

「今のは自爆よ?」

「誘導尋問です。」

「で、さっきの書いてもいい?」

「……あーも、いいっすよ。どうせ興味ないだろうし。」

「じゃあもっと聞かせてくださいよ。」

「…笑いながら聞かないでくださいよ。」












いい大人が片思いとか死ぬほど恥ずけーんすから。前置きもこのライターには通じなそうだ。ため息を落として煙草に火をつけた。ゆらりと紫雲が上がってすっと消えるのを見届けて、俺は頭を掻いて身を乗り出したライターに苦笑いした。







「…すっげぇ、可愛い娘です、よ。」








ポツリと落とせばさぞ愉快そうに笑って手元のテープレコーダーのスイッチを入れた。












(それはみんなのすきなひと)









[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ