SS

□ドーナツモチーフ
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 グラハムは揶揄するような笑みを浮かべた。
「見ていたのかい? 君も趣味が悪いね」
 ビリーは苦笑を禁じ得ない。
「人の予定も聞かずに、いきなり当日、ホテルの予約をとってあるからと呼び出す君も、相当だと思うがね」
「それは悪かったよ」
 皮肉めいた物言いをして肩を竦めたグラハムを前に、ビリーは息を抜く。
「でも今日は僕の誕生日だよ。君なら空けておいてくれて当然だと思うけど」
 そう言うと、グラハムはふんと軽く鼻を鳴らした。
「勿論、空けていたさ。そして別のプランを立てていた」
「へぇ」
 ビリーは素直に感嘆を漏らす。近頃ガンダムに目がないグラハムが、自分の誕生日を覚えていたことも意外だったし、その為に計画を練っていたというのも驚きだった。
「君の組み立てたデートプランというのも興味深いね」
 ビリーは微笑を浮かべてワイングラスを揺らす。
「だが、今日は君の誕生日だ。君のしたいことを優先しよう」
 グラハムは白い歯を見せて笑い、椅子の背もたれに寄りかかる。ウエイターが丁度良いタイミングで、グラハムの注文したワインを運んできた。
 ビリーは黙ってウエイターが去るのを目で追った。乾杯をしたら、すぐにでも切り出すつもりだった。
「では、ハッピーバースデーだ、カタギリ」
「有り難う」
 グラハムが持ち上げたグラスに、ビリーはこつんと自分のグラスを合わせる。二人はお互いに一口ワインを飲んで、喉を潤した。
 グラハムがワイングラスをテーブルに置いたのを見計らい、ビリーは胸ポケットからおもむろに例の小箱を取り出す。
 大きく深呼吸を一つしてから、ビリーは切り出した。
「グラハム」
「ん?」
「君に貰って欲しいものがあるんだけど」
「私に?」
 グラハムは怪訝顔で首を傾げる。
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