献上小説置き場2

□ワガママな執事
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「おはようございます、10代目!!」
 
教室に入るなり、彼は大声で挨拶した。
 
 
 
 
最近来た転入生、獄寺隼人。
ハーフで顔も良いため最初は人気もあったが、如何せん人に対する態度が最悪だった。
 
だが、そんな彼でも唯一尊敬する人物がいる。
それが、沢田財閥の跡取り、沢田綱吉だった。
 
来て早々獄寺は綱吉の下僕のようになり、番犬のようについて回った。
だがこれでも彼は、イタリアの有名な会社の社長の息子なのだ。
今は日本に留学という形で勉強に来ているのだが、日本でもトップレベルの沢田財閥に彼の父親が昔世話になったとかで、とにかく沢田財閥はすごいと聞かされてきたらしい。
会った瞬間から獄寺は沢田財閥の10代目になる綱吉を「10代目」と呼び、慕った。
 
 
 
「10代目、今日も通学お疲れ様です!」
 
「獄寺君……お、おはよう」
 
綱吉が挨拶するだけで、彼の顔はまるで至福を得たようになる。
 
「よっ、獄寺」
 
「……けっ、野球バカが」
 
しかし、山本が挨拶をするとこんな具合に最悪の対応だった。
 
 
 
 
昼休み。
屋上が彼らの集まり場だ。
 
「10代目っ、今日の放課後はお暇ですか?!」
 
獄寺が嬉々として尋ねる。
山本など視界に入っていない。
 
「ご、ごめんね獄寺君、今日はちょっと…」
 
「何スか?」
 
「うん……ザンザスが…ね、社交界のマナーを教えるとかで…」
 
「ザンザス……」
 
獄寺はその名を繰り返す。
尊敬する10代目の執事であり、たまに話にも出てくる。
出来るなら自分がその役につきたいくらいだった。
 
 
「…執事なんてろくなもんじゃないっスよ」
 
「え?」
 
聞き返され、獄寺は声を出してしまっていたのだと気づく。
 
「獄寺君、もしかして執事いるの?」
 
「え…ま、まぁ一応……」
 
山本も興味深々に耳を傾けてきた。
 
「どんな奴だ?」
 
「ハッ、誰がテメェなんかに…」
 
「俺も気になるな」
 
「よろこんでお話しますっ!」
 
ここまでの態度の差にも、山本は気にしない。
だからこそ彼らと一緒にいられるのだ。
 
獄寺は渋い表情で話し出した。
 
「……俺の執事は…まだ子供なんです…」
 
 
そう、執事としてはとても若く、驚いた記憶はまだ新しい。
 
 
 
 
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