献上小説置き場2
□貴重な貴重な体験
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「……………」
雲雀は、絶句するしかなかった。
今日はいつものように、雲雀が一人暮らししているアパートへディーノが遊びに来ていた。
そして他愛ない話を主にディーノがする。
お腹がすいたからそろそろ何か食べようかなんて話をしていたところ……突然ディーノが煙に包まれた。
これには雲雀も驚き、思わず立ち上がりトンファーを構える。
だが煙が晴れてそこにいたのは、先程の彼ではなく、自分と同い年くらいの少年だった。
「……………」
金髪、外人。
「……ここは…?」
極めつけに外国語。
そしてこの顔。
「…まさか……」
いやでも、以前に一度だけ見た事がある。
“10年バズーカ”
その名の通り、10年後の自分と入れ替わってしまうバズーカ。
最初は信じられなかったが、実際に見てしまったから信じざるを得なかった。
でも別に10年バズーカに撃たれてないし、そもそも大人の彼が来るならともかく、目の前にいるのは明らかに過去の彼だ。
「っ……」
そこで雲雀は気づいた。
そして、確信した。
「君は……ディーノ…だよね?」
日本語が通じるかわからない。
だがイタリア語なんて話せなかった。
「……アナタは…誰ですカ…?」
たどたどしい日本語。
おそらくは覚えたてなのだろう。
雲雀はとりあえずソファーに座るディーノの横に腰を下ろした。
「僕は雲雀恭弥」
「ワタシは、ディーノ、です」
少し警戒心の残る目で雲雀を見ながら、ディーノは答えた。
そして不安そうに辺りを見渡す。
雲雀は優しく、ゆっくり言った。
「ここは日本。煙に包まれる前の事、覚えてる?」
「えと……ボヴィーノファミリーとのパーティーが、あって……向こう、ボスが酔ってバズーカ持って、こっち向けて……ココにいます」
なるほど、それが10年バズーカだ。
というか10年前にもうそんなものがあったのか…。
スーツという格好も納得出来た。
だがおかしい。
これの効果は5分だと聞いたが、先程から5分はたっている気がする。
まさか……
「ねぇ、そのバズーカ、試作品だったりする?」
「シ?」
「え〜と……それについて何か言ってた?」
「タメシ、だと…。まだ完成じゃナイけどって…」
「……………」
間違いない。
試作品だから効果時間が定まっていないのだ。
となると、彼にこの状況を説明せねばなるまい。
雲雀は出来るだけゆっくり、簡単な単語を使って幼いディーノに説明を試みるのだった。