献上小説置き場2

□貴重な貴重な体験
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数分後。
 
 
「……わかった?」
 
「ハイ、わかりました」
 
最終的に、電子辞書まで持ち出して説明した。
イタリア語が入っていて良かったと心底思う。
 
「…で、キョーヤ…さんは、ワタシと、どんな関係ですカ?」
 
「え…?」
 
「ワタシ、マフィアやってます。でもココにいます」
 
「あー……」
 
雲雀はしばらく考え込む。
今の彼に、自分が男と恋人同士だと言って理解できるだろうか?
 
「キョーヤさん?」
 
「……いや、僕は何も言えないよ。君だって、未来の事はあまり知りたくないだろう?」
 
「………ハイ…」
 
「それと、呼び捨てでいいよ」
 
「キョーヤ…?」
 
「そう」
 
すると「キョーヤ、キョーヤ」と繰り返すディーノ。
どうも調子が狂う。
まるで3歳児でも相手にしているかのようだ。
 
 
 
その時、クウゥ〜…とお腹の鳴る音がした。
雲雀は自分ではない事を確認すると、ディーノを見た。
彼は申し訳なさそうに顔を赤くする。
 
「…お腹すいたの?」
 
「ハイ…」
 
「パーティー会場にいたんじゃなかったっけ…」
 
「時間、なかったデス」
 
何か忙しかったのだろう。
まぁこの時はどうだか知らないが、いずれはファミリーのボスとなる男、忙しいのは当たり前だ。
 
 
「何か食べようか。有り合わせで作るからちょっと待ってて」
 
「あっ、ワタシもお手伝いしマスっ」
 
そして立ち上がると、ディーノは10年前のくせして自分と同じくらいだった。
確か前に22歳とか言っていたから、今は12歳のはずだ。
それが少し悔しいが気にしない事にする。
 
雲雀は冷蔵庫を眺めていたが、思いついたようにディーノの方を向いた。
 
「そうだ、君さ、それやめなよ」
 
「ハイ?」
 
「敬語とその一人称」
 
「ケ…?」
 
首を傾げるディーノ。
雲雀はため息をつき、「まぁいいや」と冷蔵庫から卵を取り出す。
 
「せめてその“ワタシ”ってのはやめてくれる?なんかすっごく変な感じするし」
 
「ワタシ…ダメ…」
 
「そう。“ワタシ”じゃなくて“オレ”にしなよ」
 
「オレ…?」
 
「うん、そう」
 
するとディーノはまた「オレ、オレ!」と繰り返して何故か嬉しそうに笑った。
それが少し可愛かったとか、会話が成立するだけで嬉しいとか思ったのはきっと気のせいだ。
 
 
 
 
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