献上小説置き場2
□再会は波乱と共に
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それは本当に突然だった。
ツナが10代目になって数年たった頃。
その日はベルがちょうど獄寺に会いにボンゴレ本部を訪ねていた。
実はこの2人は付き合っている。
というかベルが押しに押してどうにかそれっぽくなったという感じだが。
そのボンゴレ本部の廊下を決して仲良くはないが一緒に歩いていると、目の前からツナともう1人誰かがやってきた。
「10代目っ、お出かけで……」
獄寺が駆け寄るが、途中で固まってしまった。
「あ、獄寺君、ちょうど良かった………ってありゃりゃ、やっぱり固まっちゃったか」
「しししっ、何コイツ?」
笑ってそう言ったのはベルではない。
獄寺を追ってきたベルでさえも、その場に固まってしまっていた。
「2人共、とりあえず動こ?まぁ驚くのもわかるけどね…」
その時、ベルが勢いよくツナに…正確にはツナの横にいる人物に向かって飛びかかった。
「テメェ……ジル!!生きてやがったのか!!」
ジルと呼ばれたベルそっくりな青年は、ナイフを軽くかわす。
それからはほぼ互角に闘いを始めてしまった。
「じゅ、10代目…これは一体…?」
やっと落ち着いてきた獄寺。
とりあえず喧嘩というか殺し合いは放っておく。
「彼はジル。見た通り、ベルの兄弟…双子の兄だよ」
「でも兄は確か…」
ベルが幼い頃に殺した、と聞いている。
ツナは「そうなんだよね〜」と苦笑し、続けた。
「なんかさ、かろうじて生きてたみたいで……ベルがここにいるって聞いて遊びに来たみたいだよ」
「あ、遊びに……?」
本気で殺し合っているようにしか見えないが……。
「でさ、どこのスパイでもなさそうだから、ちょうどボンゴレ案内しようと思ってたんだ」
「10代目自ら?!そんなお手をわずらわせるなんてとんでもないです!それなら自分がやります!」
「はっ??!!」
それまで闘いにだけ集中していたベルがそれを聞いて思わずナイフをしまう。
そしてジルを放って獄寺に駆け寄った。
「ちょっと隼人?!そんなの王子が許さないからね!!」
「じゃあテメェが案内しろ。仮にも兄だろ」
「ヤだね」
その様子を見ていたジル。
ニヤリと笑い、獄寺の腕を掴んで言った。
「ボンゴレ10代目、俺コイツに案内してもらうから」
「はっ??!!」
「あ、そう?じゃあよろしくね、獄寺君」
「はいっ」
ツナの頼みともあれば喜んで引き受ける獄寺。
これも右腕の務めだ。
だがベルは納得していなかった。
「隼人!王子まだ認めてねーし!!」
「うるせー、10代目のご命令だ」
「っ………」
ツナに何か抗議しようとしたベルだが、見渡せばその場には3人しかいなかった。
厄介事に関わりたくなくて、超直感などなくても察したツナが早々に逃げたのだ。
「じゃあ、えーと…おまえハヤトっつーの?よろしくな」
ジルはちゃっかり獄寺と腕を組んでご機嫌だった。
それに黙っているベルではない。
「テメェ…ジル!隼人からその汚ねー手を放せ!!」
「ハッ!俺を殺せなかった奴が何言ってやがる」
「今度こそ完璧に切り刻んでやるよっ!」
また飛びかかろうとしたベルだが、獄寺を盾にされてそれは叶わなかった。
「おいっ」
「しししっ、ベル、おまえコイツには手出し出来ねーんだろ?」
「くっ……」
ジルは気づいたのだ、ベルが獄寺を好きな事に。
そして見せつけとばかりに、ジルはさらに獄寺に顔を近づける。
「なぁおまえ、よく見りゃ結構綺麗な顔してんじゃん。この後さ、俺とイイコトしねぇ?」
「はぁ?ってか顔近ぇ!」
「アンタがいんなら俺、ボンゴレに入ってもいいぜ?言っとくけどそこにいるバカより強ぇし」
「っ………!!」
そこでとうとう、ベルがキレた。
無理矢理獄寺をジルから引き離し、自分の元に抱き寄せる。
抵抗しようとした獄寺だが、出来なかった。
いつもと比較にならないくらい強い力。
怒りで震えた腕。
見上げれば、一見冷静に見えるがこれ以上ないくらいの怒りに燃えているのがわかる。
こんな彼は、初めて見た。