献上小説置き場2

□出会いは運命で
1ページ/3ページ

 
 
ベルと獄寺のキスシーンを見て、からかう気もなくなったジル。
1人でボンゴレ本部の廊下を歩いていた。
 
そして渡り廊下から中庭へ出る。
そこは綺麗に手が加えられていて、さすがボンゴレだと思った。
 
 
ジルは手ごろなベンチに腰かけ、青空を仰いだ。
 
「はぁ〜……」
 
そして先程の事を思い出す。
 
 
「………あれ?」
 
なんだかイライラするというか落ち着かない。
結構ショックだったらしい自分に驚いた。
 
「俺、まさかアイツの事、割と本気だったのか…?」
 
いや、まさか。
だってあれはベルをからかう為だった訳だし。
 
「…………まっ、どーでもいっか」
 
これでボンゴレにも用はない。
そもそもここへ来たのは、馬鹿な弟がいると聞いたから嫌味の1つでも言ってやろうと思っただけ。
自分が生きていると知った時のあの間抜け面を拝めただけでもよしとしよう。
 
 
 
ジルは無駄に晴天の空を見上げたまま呟いた。
 
 
「……ムカつくくれー青い空…」
 
 
 
 
「ですよねー」
 
 
 
 
「……………………は?」
 
今、何か聞こえなかったか?
 
ジルは慌てて隣を見る。
いつの間にか、変な帽子を被った少年が座っていた。
 
「………おまえ何?」
 
「何とは失礼ですね〜…これでも人間ですー」
 
間延びした話し方。
敬語なのに、誰をもイラつかせるような口調だ。
目も完璧座っている。
 
「その隊服……ベルと同じって事は、ヴァリアーって組織か」
 
「当たりですー、フランと言いますー」
 
フランは軽く、気持ちのこもらないお辞儀をした。
 
 
 
 
「で?何おまえ、何か用?」
 
「いえね〜、ベル先輩と獄寺隼人には関わらない方がいいですよ〜」
 
「もう遅ぇーし。っつーかどーでもいい」
 
「もしかしてぇ、フラれた事、結構ショックだったんじゃないですかぁ〜?」
 
「…………おっまえ……嫌な奴だな」
 
「そんな事ないですよ〜」
 
フランはゆっくりゆっくり、しかし最後の台詞はわざとらしく言う。
本当に、落ち込んだ時に傍にいてほしくない人ナンバーワンかもしれない。
 
 
「って、ん?おまえ、どこまで知ってんだ?」
 
「え〜?何も知らないですよ〜?」
 
「…………」
 
嘘か本当かもわからない。
自分も表情が読めない方だとは思うが、コイツ程ではないだろうとジルは思った。
 
 
 
 
フランはしばらく頭をユラユラ揺らしていると、帽子を取った。
そして伸びをする。
 
「おまえ、それ被ってて邪魔じゃね?」
 
「えーでもぉ〜、これ被ってないと先輩怒るんですよねー」
 
「は?何で?」
 
「何か前任の人が被ってたから、みたいな〜?」
 
フランは「よくわからないですけどー」と言いながら、蛙の帽子をポスッと草むらに落とした。
 
 
 
「で、貴方はこれからどうするんですかー?」
 
「は?」
 
落ちた蛙の帽子を不思議そうに見ていたジルだが、そう言われてフランの方を向く。
 
「“は?”じゃなくて〜、さっき決めたここにいる理由も、もうなくなっちゃったワケでしょー?」
 
「…………おまえ、ホントにどこまで知ってんの?」
 
「え〜………ミーはさっきの先輩達との出会いからしか見てませんよ〜」
 
「って全部じゃねーか!」
 
ジルは盛大にため息をつき、ベンチに沈んだ。
その様子をフランは楽しそうに眺める。
 
「やっぱり顔とか口調はベル先輩に似てますけどぉ、あとはあんまり似てないんですね〜」
 
「は?」
 
まぁ、顔は我ながら似ていると思う。
全く嬉しくはないが。
 
「なんか貴方の方が……………あ、やっぱり何でもないです〜」
 
「ちょっ、何だよ、気になんじゃんっ!」
 
「え〜、だから何でもないですってば〜」
 
「おまえ明らかに何か言いかけただろっ」
 
「それは〜……あ、あれですよー、今日の夕飯はチーズケーキがいいなぁ〜…みたいな?」
 
「ケーキは夕飯じゃねーだろ!っつーかさっきの流れでそれがあるかっ!」
 
「あ、ミーはもう眠いんで、ちょっと昼寝しますねー」
 
「はっ?!」
 
するとフランは草の上に寝転がると、本当に昼寝を始めた。
 
 
 
「おまえ…暗殺部隊じゃねーの?」
 
「そうですけどー?」
 
「こんなトコで寝ていいワケ?」
 
「気配がしたらソッコーで起きて撃墜するんで問題ないですよー」
 
そして「そろそろ寝かせてくれますかー?」と言い、気持ち良さそうに寝た。
 
 
「…………」
 
ジルは呆気にとられる。
自分以上のマイペースぶりにちょっといろいろ負けた気分だ。
 
でも気になる。
コイツの本音が気になる。
さっきの言葉の続きが気になる。
何だか…気になる。
 
 
 
ジルは静かに立ち上がって、眠るフランの元でしゃがむ。
そしてそのあどけない顔にそっと触れた。
 
起きている時はその座りきった目とムカつく口調で隠れてしまっているが、こうして寝顔を見ていると、やはりまだ子供だ。
 
 
「………わっかんねー奴」
 
 
 
 
「…………そろそろいいですかー?」
 
 
「……うわ、ビックリした」
 
気づけば、フランは目を開けてこちらを見ていた。
 
「気配があったら起きるって言いましたよねー?どこまでミーの安眠を妨害すれば気が済むんですかー?フラれた腹いせなら他を当たって下さいー」
 
「………………っ」
 
やはりムカつく。
というか別にフラれた訳ではない。
……多分。
 
 
「って、あれ?撃墜はしねーんだ?」
 
「されたいんだったらしますけどー、でもここで暴れると後で上がいろいろとうるさいんですよねー」
 
そう言ってフランは身体を起こす。
まだ数分しか寝ていない…というかおそらくは寝転がっただけだろう。
 
「っても、何でいきなり昼寝なんだ?」
 
「仕事は大体夜なんでー、昼に寝ておくんですー」
 
なるほど、暗殺を昼にこなそうという方がおかしいだろう。
 
 
 
 
 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ