献上小説置き場2

□出会いは運命で
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フランは帽子を拾い立ち上がる。
自室で寝ようと考えたのだ。
 
そして帰り際、振り向いてその座った目でジルを見て、言った。
 
「あの2人は結構前から割とラブラブなんでー、仕方ないとは思いますよ〜?」
 
「………」
 
いきなり何を言うのかと思えば、励ましのつもりだろうか。
 
ジルはさらに続けた。
 
「ミーはもうヴァリアー邸に戻って寝ますけどぉ〜。それじゃあさよならですー、ジル…先輩?」
 
「っ………」
 
 
 
そしてフランが帽子を抱えて中庭を出ようとした時、ジルが後ろから叫んだ。
 
「決めた!!」
 
「……はぃ?」
 
フランは思わず振り返る。
するとジルがものすごい勢いで走ってきて、後ろから飛びついてきた。
 
 
「へっ??!!」
 
ある程度の出来事には対応出来るフランでも、これには驚き目を丸くした。
抱えていた蛙の帽子がボスッと滑り落ちる。
 
そしてすぐにいつもの表情に戻ると、首が回らないため目線だけを横にやった。
もちろん、見えなどしないが。
 
 
「………あのぉ〜…いきなり何ですか〜?結構驚いたんですけどー」
 
「しししっ、決めた!俺ここにいる!」
 
「はぁ……」
 
こことはボンゴレの事だろう。
 
ジルはさらにフランをきつく抱きしめる。
嬉しくて嬉しくてたまらない子供のようだった。
 
「ここにいる理由見つけちったから〜、そうだな…あの10代目に頼んでどっかの隊に入れてもらおっかな」
 
「あ、ベル先輩を倒してその座を奪うとかじゃないんですねー」
 
「おまえらのボスとか仲間がアイツに加担したら、さすがの真の王子でもヤバイかもだし?」
 
「でも何でいきなり決めたんですかー?」
 
その最もな質問に、ジルはまた嬉しそうに笑い、言った。
 
 
「おまえがここにいるから」
 
 
「………ミー…ですか?」
 
「ん、おまえ…フランがここにいる限り、俺もここにいてやるよっ」
 
「頼んでないですけどぉ〜」
 
「王子の前で拒否権とかねーから」
 
「…そーゆートコはベル先輩と同じですねー」
 
フランはため息をつき、いい加減苦しいから腕の力を緩めてくれないかなぁなんて思った。
もちろん、放してくれるのが1番いいのだが。
そう思ったのが少し遅れたのはきっと、眠くて頭の回転が悪いせいだ。
 
 
「フラン、これから寝に行くんだろ?自分の部屋?俺が添い寝してやるよ」
 
「もしかしてぇ、フラれたからってミーに乗り換えですか〜?」
 
「しししっ、ちっげーよ。王子がフラれるとかありえねーから。あれはからかっただけ」
 
「ふ〜ん、そうですかー」
 
棒読みな頷きにも、ご機嫌のジルには関係ない。
 
フランは未だに離れないジルを無視して帽子を拾う。
普段の頭の重量でも肩こりになりそうなのに、この背中の重い荷物でさらに肩がこりそうだ。
 
「ミーは添い寝とかいらないですからー」
 
「だから拒否権とかねーって」
 
フランは本日何度目かのため息をつくと、そのまま歩き出した。
 
 
 
ジルも、フランにベッタリくっつきながら一緒に歩き出す。
その目はもう今触れている彼にしか向けられていなかった。
 
その彼が、先程一瞬、無表情ではなくなった。
 
「ジル先輩」と呼んだあの時。
少し恥ずかしそうに目線をそらした顔を、見てしまった。
あれは反則だろう。
不覚にも、可愛いとか思ってしまった。
 
 
おそらくフランにとってもそれは、不測の事態だったのだろう。
ベルの事を先輩と呼んでいたため、彼の兄であるジルの事も一応先輩をつけて呼んでみたら、意外と気恥ずかしかったのだ。
 
 
 
 
「いい加減離れてくれませんー?」
 
「イヤ」
 
 
結局その後どうなったかは、毎日のようにヴァリアー邸へ遊びに来るジルを見ればわかるだろう。
 
 
懐かしい出会いが、また新たな出会いを生み出したのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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