献上小説置き場2

□あっためて
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年末。
 
大掃除、宿題。
暗殺、書類。
 
お互い忙しい中、やっと休みが取れた。
 
 
 
 
「見てザンザス、息が白い!」
 
はぁ〜…と温かい息を吐くツナ。
ザンザスはそれを見て苦笑する。
 
「もう年末だからな」
 
 
ここは並盛にある公園。
人はまちまち、ザンザスは普通のコートを着ているのでそこまで目立っていなかった。
 
そう、2人はまさにデート中だった。
 
 
お揃いのマフラーをして仲良く歩く。
お互い、こうした何気ない時間がすごく嬉しかった。
 
「ねぇザンザス」
 
「あ?」
 
「俺さ、ザンザスがクーデター起こしてくれて良かったよ」
 
「は?!」
 
突然何を言い出すかと思えば、良かったとは言い難い事件。
驚くザンザスに苦笑し、ツナは続けた。
 
「だってさ、あのクーデターがなかったらリング戦もなかった訳でしょ?そしたらザンザスとこんな風になってなかったと思うな」
 
例えば違う形で会っていたら、どうだろう。
こんな風になれただろうか。
 
「くだらねぇ」
 
「なっ……だってやっぱり、お互い全力でぶつかったからこそ、今があるのかなぁと思って……」
 
「だからくだらねぇんだよ」
 
ザンザスは繰り返すと、ツナのふわふわの頭を撫でた。
 
「どんな状況だろうと、俺達が出会ったら愛し合うに決まってんだろ」
 
「ザンザス………うんっ、そうだね!」
 
 
 
その時、ツナの頬に冷たいものが触れる。
一瞬雨かと思ったが、しばらくするとそれは違うのだとわかった。
 
はらはらと降る白いもの。
 
 
「……雪だ…」
 
どうりで寒いはずだ。
 
ザンザスは嬉しそうなツナを見て微笑むと、彼を自分のコートの中に入れた。
 
「ザンザス?」
 
「濡れるぞ」
 
「ありがと。でもザンザスが濡れちゃうよ?」
 
「構わない」
 
そもそも雪は雨と違ってびしょ濡れになる心配はあまりない。
それでも、少しでも恋人には苦になるような事が降りかからないようにしたいのだ。
 
 
そのまま2人は、しばらく控え目に降る雪を見つめていた。
 
 
 
 
「っくしゅん!」
 
可愛らしいくしゃみをするツナ。
やはり寒いものは寒い。
 
「帰るか?」
 
ザンザスが尋ねるが、ツナは首を振る。
 
「ううん、まだ………あ、ヴァリアー邸に行きたい」
 
ウチは人が多いからさ、と付け加える。
ヴァリアー邸といっても、最近近くに建てたものだ。
 
「じゃあ行くか」
 
「うん。そこであっためて?」
 
それで全てを理解し、ザンザスは返事の替わりにキスを贈る。
 
 
冷たい唇も、すぐに温まるだろう
 
そう、雪も溶かしてしまう程に……
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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