献上小説置き場2
□幼児とネガティブ
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「……ん…?」
しばらくすると、ベルがやっと起き上がった。
「俺……」
リボーンに撃たれたのだと思い出す。
そして…
「俺、あんな奴の弾を避けられなかったんだ……ヤバイ、王子なのに……あれ、やっぱり王子とか言っても実は違うのかな……っていうかなんかもう何もやる気が起きない…」
ブツブツと呟き出した。
これはウザい。
非常にウザい。
そしてベルは獄寺の姿を見ると、さらに呟き出す。
「隼人が俺をここに置いといてくれんのも、同情してたりすんのかな……そういえば俺ワガママばっかりだし、隼人に嫌われても仕方ないよな……」
「お、おい…?」
さすがに獄寺もベルの豹変ぶりに戸惑う。
しかも、体育座りをして口を尖らせて拗ねているような彼の姿がなんだか可愛らしい。
「隼人、いっつも抱きつこうとしても避けるし、一緒に寝てもくれないし……もしかして好きなのは俺だけなのかな……」
――キュゥゥン
そんな効果音が聞こえてきそうな程、獄寺は心臓が高鳴るのを感じた。
いつもは拗ねていてもどこか余裕があってムカついていたが、ここまで本気で拗ねられると逆に可愛く思えてくる。
まるで幼い子供を相手にしているようだ。
もう中身は退行しているのだろうか。
獄寺はベルの前にしゃがむと、王冠を落とさないようにその頭を優しく撫でた。
「ベル、俺は別におまえを責めてねーし、嫌いだとも言ってねーぞ?むしろ………あ"――……す、好き…だし……」
すると、ベルは初めて顔を上げる。
「ホント?隼人、俺の事好き?」
「あ…あぁ……」
「っっ隼人ぉ〜〜〜っ!!」
ベルは満面の笑みで獄寺に抱きついた。
そしてゴロゴロと甘える。
「隼人大好きぃ!」
「はいはい」
いつもなら突き飛ばすその身体を、今日は抱きとめる。
キスやセクハラもない。
やはり本当に中身だけ幼児化しているようだ。
それからは本当に子守のようで、夕食も食べさせて風呂にも入れてやった。
中身は推定5歳前後ってところだろうか…。
「今日、隼人と一緒に寝たい!」
「あぁ」
これなら害はない。
子供嫌いなはずの獄寺だが、いつも見慣れているベルが中身だけ幼くなるというのは、反則的に悶える程ときめいた。
そして仲良く布団に入る。
獄寺が包まれる形になったが、まぁ体格的にしょうがないだろう。
2人はそのまま眠りについた。
「………アレ?」
早朝5時。
ベルは目を覚ました。
そして自分のベットではないとすぐに気づく。
さらに腕の中には可愛い恋人の姿が。
「……………ん?え?何?何で隼人が一緒に?」
ネガティブ弾に撃たれてからの記憶が一切抜けていた。
何が何だかわからない。
だが、これだけはわかる。
「コレって隼人を襲えって事だよね〜〜っ!!」
未だ腕の中で眠る恋人に乗りかかる。
それでやっと獄寺は目を覚ました。
「……ん?ベル?………は?何で上に………っまさか…!!」
気持ちのいい快晴の朝。
アパートには悲鳴と笑い声が響き渡ったのだった。
→後書き