献上小説置き場2

□だってやっぱり不安だから
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イタリア某所。
 
ここでは今、沢田綱吉のボンゴレ10代目就任披露宴が行われていた。
就任式はまだもう少し先なのだが、もう決定済みだし誰も異論はないだろう。
ツナがボスとしてではなく出席出来る最後のパーティーだった。
 
 
「10代目!就任おめでとうございます!」
 
「いや、まだだよ獄寺君……でも、うん、ありがとう」
 
ツナは苦笑するも心の底からお礼を言う。
きっと、周りのみんなの誰か1人でもいなかったらここまで来られなかっただろう。
もちろん、自称右腕候補の彼もその1人。
 
獄寺はもっとツナと一緒にいたかったが、やはり主役である彼は何処からも引っ張りだこになっていた。
ルッスーリアは了平に擦り寄っているし、スクアーロは女性達に囲まれながらも常にザンザスを気にしている。
フゥ太は山本にグラスを渡し、静かに乾杯していた。
 
各々が楽しんでいる中、何故か獄寺は浮かない顔をしていた。
その原因とは……
 
 
「きゃー、ベルフェゴール様ァ」
 
「今日も素敵ですわね」
 
「スーツ姿もお似合いですわ」
 
ヴァリアーのベルフェゴールことベルが、女性達に囲まれていた。
彼女達は執拗に色気を出して媚びている。
それもこれも、彼の家が金持ちであると噂がたっているからだ。
自分でも王子と言っているし、玉の輿でも狙っているのだろうか。
 
だが当人のベルは、面倒臭そうに押し黙っていた。
何故なら、ボスから絶対に問題を起こすなと言われているからだ。
今でも上層部からは、リング戦の話を持ち出されては嫌味を言われてきた。
これ以上問題を起こしたら公の場には出てこられないかもしれない。
ベルはそれでもいいと思ったが、いろいろ動き辛くなると聞いてそれは少し嫌だと考え、しぶしぶ言う事を聞く事にした。
 
本当は、今すぐにでも恋人の元へ行きたいのだ。
 
 
 
だがそんな事など知らない獄寺。
彼の周りにも女性達の群れが絶えないのだが、適当にやり過ごしている。
 
確かに今日のベルはいつもと違う雰囲気だ。
真っ黒な隊服ではなく白いスーツを着こなしているし、立ち振る舞いもあのワガママな性格からは信じられない程紳士的で優雅だ。
認めたくはないが、カッコイイ。
 
なのに、その視線は自分には向かない。
何処の誰とも知らない女性達に向いている……と、獄寺は思っている。
実際はベルはちょくちょく恋人の方を気にしているのだが。
 
 
 
 
獄寺は少し外の風に当たろうかとグラスを置く。
そしてバルコニーに向かって歩いて行く際にベルの方を見ると………彼が誰か知らない女性に抱きつかれていた。
 
 
「………………」
 
思わず足が止まる。
しかもベルは抵抗せずにされるがままになっている。
 
「…何だよ……あれ…」
 
嫌だ
見たくない
認めたくない
 
 
獄寺は速足でその場を立ち去った。
 
もう、こんな所にはいられない。
 
 
 
 
 
 
獄寺がその場からいなくなったのとほぼ同時に、ベルが抱きついている女性を引き剥がした。
もう我慢の限界だったのだ。
不快な香水の匂い、耳障りな媚びる声、見せつけるように露出させている興味のない身体。
どれもこれも吐き気がする。
これでも、優しく引き剥がしただけ拍手ものだ。
 
一方、拒絶された女性はプライドが傷ついたのか眉をしかめる。
確かに彼女はこのパーティーの中でも綺麗な方だし、スタイルも抜群だ。
相当の自信があるのだろう、ドレスもかなり胸や足を強調するものだった。
 
「ベルフェゴール様?何故ですか?私の事がお気に召しませんか?」
 
「………王子さ、もう恋人いるから」
 
その瞬間、彼の周りにいた女性達が驚きの声をあげる。
「本当ですか?!」「誰なんです?!」「この会場にいらっしゃるのですか?!」などと取り乱して質問攻めにした。
それに軽く笑いながら、ベルは黙ってその恋人を捜しにうんざりする群れから脱するのだった。
 
 
 
 
 
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