献上小説置き場2

□最高のプレゼント
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「やる」
 
獄寺は帰ってくるなり腕を組んで立ち、居候しているベルにぶっきらぼうにそう言った。
 
「……え…?何?隼人…」
 
ベルがそう言うのも無理はない。
だって、「やる」と言った獄寺本人は、何も持っていなかったからだ。
 
獄寺は精一杯恥ずかしさを堪えて、自分を指した。
 
「誕生日!今日1日は俺をやる!!」
 
「……………」
 
ベルは唖然としてその場に立ちつくした。
まさか、まさかこんな事が起こるとは思わなかったからだ。
 
確かに、自ら誕生日だと言ってプレゼントを催促するような事は言った。
でも彼の事だから、絶対に自分の1番欲しいものはくれないと思っていた。
 
 
「隼人……マジで…?」
 
「いらないならいいっ!!」
 
「いやっ、いるいる!超いる!」
 
慌ててベルは獄寺を抱きしめる。
獄寺は一瞬ビクッとするが、なんとか抵抗はしなかった。
先程自分をやると言ったばかりだ。
 
「隼人、それ誰かの入れ知恵?」
 
「10代目のご意見だ」
 
「へぇ…アイツが」
 
なんか少し意外だ。
 
「10代目は、自分が貰って嬉しいものをあげろと助言して下さった」
 
「……………」
 
固まったベルを少し押し返し、獄寺はその顔を覗き込む。
 
「どうした?」
 
「…隼人……それって、隼人も俺が欲しいって事…?」
 
「は?」
 
「だって、自分が貰って嬉しいものをあげたんでしょ?って事は…」
 
そこでハッと気づいた獄寺。
慌てて逃げようとするが、腕を引っ張られまた抱きしめられてしまった。
 
「っっ隼人、超可愛い〜〜っ!!なになに、王子照れるじゃん〜」
 
「照れるなっ!だったら放せ!」
 
「い〜や。だって今日1日、隼人は俺のものでしょ〜?」
 
「そっ……うは言ったが…」
 
ちょっとはやまったか?
 
ベルはご機嫌で獄寺を寝室まで引っ張る。
もちろん、そこでやる事は1つ。
 
「ベルっ、テメェまさか…」
 
「しししっ、お言葉に甘えて貰ってあげるよ」
 
「や…やっぱりはやまったぁ〜〜っ!!」
 
その夜、アパートからは笑い声と叫び声が響いたのだった。
 
 
 
 
 
 
次の日。
 
「獄寺君」
 
「じゅ、10代目っ、おはようございます」
 
「昨日、どうだった?ベルとは」
 
「えっ……」
 
ギクッと一瞬固まり、その後顔を赤く染めたり青くしたりする獄寺。
 
そこへ山本がひょいっとやって来た。
 
「よぉ。……ん?獄寺、なんか顔赤いなー」
 
睨まれているのも気にせず、山本は「そうだ」と何かを思い出した。
 
「そういや、今日の朝スクアーロが来てさー、なんか避難させてくれって」
 
「避難?」
 
「ん。明け方ベルがヴァリアー邸に来たと思ったら、ご機嫌で所構わずナイフ投げてたらしくてさ。アイツって機嫌良くても暴れるのなー」
 
「……………」
 
ツナがちらっと獄寺を見ると、彼はフルフルと震えていた。
それはきっと、怒りや恥ずかしさやいろんなもので。
 
だがさすがは山本、天然でさらに続けた。
 
「あ、昨日ベルの誕生日だって確かツナ言ってたよな。獄寺が何かあげたんか?」
 
「なっ……」
 
獄寺が口ごもっているので、代わりにツナが「あげたよね?」と答える。
すると山本は「そっかー、だからベルが機嫌良かったのかー」と笑った。
 
 
「で、何あげたんだ?獄寺」
 
「それは……っ」
 
もちろん、自分をあげたなどと言える訳がない。
 
どうしていいかわからなくなった獄寺は、教室を走り去ってしまった。
 
 
「あーあ……獄寺君って、ホントに素直になる事が苦手だよね」
 
「だなっ」
 
獄寺がベルの事を好きなのはとっくに周囲も知っているのだが、彼はどうしても認めたくないらしい。
まぁベル曰く、そんな素直になれないところも可愛いらしいのだが。
 
 
 
きっとあの2人だから上手くいっているんだなぁ〜と、しみじみ思うツナだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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