献上小説置き場2
□お買物
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並盛スーパー。
その名の通り、平々凡々なスーパーである。
そこに、珍しい男同士で買い物をする2人が。
「武ぃ、次はなんだぁ?」
「ん〜…そうだな、お餅!お雑煮に入れるのな!」
「了解だぁ」
スクアーロはカゴを持って餅売場を探す。
実はお雑煮とか言われても想像もつかないのだが、日本の正月についていちいち質問していたらキリがない事に気づいたのだ。
「スクアーロ、ずっとカゴ持ってるだろ?結構沢山買ったし、俺代わるよ」
「いや、これくらい問題ないぞぉ」
「でも……」
「これも修行だぁ」
譲りそうになかったので、山本は仕方なく諦めた。
本当は2人で持とうとも思ったが、この広くもないスーパーでは他の客の邪魔になってしまうだろう。
「あとはやっぱ…みかんかな?こたつで食べたいのな!あと餅に乗せる!」
「餅に?!………じゃあ箱で買うかぁ」
「多くないか?」
「どうせおまえ、こたつでみかん食って1日ゴロゴロしてんだろぉ?」
「なっ……牛乳も飲むのな!」
フォローになっていない山本の台詞に苦笑し、スクアーロは成果売場へ向かった。
やはりこの時期はみかんが沢山ある。
箱売りも重さごとに分かれていた。
「武ぃ、何キロのを……」
「っだからそれじゃダメだって!!」
「……あ"?」
横から、なにやら良く聞く声が……
「おい、俺の超直感を疑う気か?」
「だってなんか固そうだしっ」
なんと、ある意味1番会いたくない2人だった。
「って、あれ?スクアーロ?」
ツナがやっとスクアーロに気づいた。
そして隣にいるザンザスも、暗殺部隊のボスのくせにたった今気づいたらしい。
「…カス、何でテメェがここに…」
「う"お"ぉい…それはこっちの台詞だぁ」
どうしてこの2人に会ってしまうのか…。
しかもかなりどうでもいい事で言い争っていたような気がする。
「武、みかんは後で……」
その場から逃げようと思ったスクアーロだが、それは無駄に終わった。
「聞いてよスクアーロ!」
ツナにしっかりがっしり肩を捉まれてしまった。
「う"お"ぉい、俺は関わる気は…」
「絶対こっちのみかんの方が美味しそうなのに、ザンザスってばこっちがいいって言うんだよ?!スクアーロはどう思う?!」
「…………」
なんという低レベルな喧嘩。
ていうか見た目どっちも変わらないし。
だが山本はじっくり見ると、ツナの選んだみかんの方を指して言った。
「俺はこっちが美味いと思うのな〜」
「………おいカス、テメェの連れはこの俺に楯突く気らしいな?」
ザンザスは深紅の瞳でスクアーロを睨む。
「ほらザンザス、やっぱり山本も俺が選んだ方がいいってさ。スクアーロもそう思うよね?」
「え"………」
巻き込まないでほしい。
上司も物凄い形相で睨んでいる。
「スクアーロ…?」
「っ……!」
愛しの恋人が見上げてくる。
スクアーロの中では葛藤が続いていた。
上司か恋人か。
否、答えは決まっている。
「俺もそっちの綱吉が持ってんのがいいと思うぞぉ」
上司の目が何だ、上司の暴力が何だ、そんなのいつもの事だ。
……少し怖いが。
「じゃあ決定!ね、ザンザス、こっちでいいよね?」
「…………わかった」
どうやら2種類買うという選択肢はないらしい。
今のところ、ザンザスが素直に従うのは綱吉のみだ、とスクアーロは思った。
ザンザスは素直にそのみかんをカゴに入れると、ツナの耳元で囁く。
だがしっかりばっちり山本とスクアーロにも聞こえてしまっていた。
その内容とは「じゃあ、俺がそのみかんを1つ食べるごとにおまえからキスしろ」
というものだった。
もちろん、ツナが死ぬ気でザンザスを殴ったのは言うまでもない。