献上小説置き場2

□師弟関係成立秘話
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夜のコンビ二。
まだ日本に滞在していたマーモンは、1人で買い物に来ていた。
見た目赤ん坊だが、中身はそこらへんの大人よりえげつない。
 
お菓子コーナーでお目当ての物を探す。
最近は置いているコンビ二も少ないから、見つけるのも結構大変なのだ。
 
 
 
「あった」
 
マーモンが手に取ったのは、5円チョコ。
今ではちょっと懐かしいようなあまり見かけないような代物だ。
 
実は日本に来て最初にコレを見つけた時、一目惚れしたのだ。
元々チョコは好きだったし、何より大好きなお金の形のチョコだなんて素敵すぎる。
 
 
 
「あれ」
 
頭上から声がして見上げると、少年がこちらを見ていた。
 
「………?」
 
どこかで見た事があるような…?
 
「何、君まだ並盛にいたの?また暴れたら今度こそ咬み殺すよ」
 
「………っ雲雀恭弥ぁぁ??!!」
 
マーモンが気づかなかったのも無理はない。
何故なら今の雲雀は、いつもの風紀委員の腕章入りの学ランではなく、至って普通の私服を着ていたからだ。
帽子まで被っている。
 
 
「どどどっ……どうしておまえがここに…」
 
「並盛は僕の街だ、何処に居ようとおかしくはないだろ」
 
「ま、まぁ……確かに」
 
マーモンは焦っていた。
だって相手はあの雲雀恭弥。
ボスに躊躇いなく挑んでいった挑戦者。
しかもあのゴーラ・モスカを一撃で沈めた男。
そして何より、霧の守護者六道骸に一度はやられたにせよ、力はほぼ互角と聞いている。
まだあの霧戦が忘れられない。
 
 
 
「ところで、君はこんな所で何を……」
 
言いかけ、雲雀はマーモンが腕に抱えている物を見る。
食べた事はないが、知ってはいる。
5円チョコ。
 
「へぇ〜…君、それ好きなの」
 
「わ、悪い?!」
 
「別に。ちゃんと買えば問題ないよ」
 
そして雲雀は、弁当のコーナーへ向かった。
マーモンは気になりついて行く。
 
 
「……何でそんなカッコしてるんだい?」
 
気づいた雲雀は少し眉をひそめる。
 
「君、まさか僕がいつも制服着てると思っているのかい?」
 
「いや、そういう訳じゃ…」
 
「まぁ、大体はそうだけど」
 
そうなんじゃん!とつっこみたいが、怖いのでやめておく。
 
雲雀はハンバーグ定食弁当を取ると、ため息を1つついて言った。
 
「…前にあのいつもの格好で買い物をした事があってね、散々だったんだよ」
 
「散々?」
 
「レジで対応したバイトが風紀委員の腕章を見た途端にかしこまってね。それだけなら良かったんだけど、焦ってお金をばら撒いて、しかも買った品物も落としてね」
 
「それは……」
 
悲惨な。
 
「だからそれからはなるべく夜中に、こうして私服であまり顔を見せずに買い物するんだよ」
 
「なるほど」
 
確かに、一瞬ではわからなかった。
そのバイトとやらも、風紀委員の腕章と学ランでビビッてしまったのだろう。
 
 
 
雲雀は弁当を持ってレジへ向かおうとするが、マーモンがそれを見て驚いた。
 
「ちょっとっ、まさかそれ夕飯?!」
 
「え、そうだけど」
 
「夕飯がコンビ二弁当?!」
 
「悪い?」
 
「いや……」
 
悪くはないが、育ち盛りが夜にコンビ二弁当はどうだろう。
 
 
「君は違うのかい?」
 
「僕はちゃんと自炊してるよ」
 
それかヴァリアー邸に行けばルッスーリアが作る、と付け加えた。
 
「自炊…ねぇ……」
 
考えた事なかった。
食事は給食かコンビ二で買うくらいだ。
 
「自炊は節約出来ていいよ」
 
「でも5円チョコは買うんだ」
 
「こっこれは別っ!」
 
慌ててムッと言い返すマーモン。
5円チョコだけは譲れない。
 
 
 
「……………」
 
雲雀はしばらく考えると、ふと先程手に取った弁当を売り場に戻す。
そしてマーモンに向かって言った。
 
 
「じゃあ作ってよ」
 
 
 
 
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