献上小説置き場2

□師弟関係成立秘話
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トントン
 
軽快な音がマンションの一室で響く。
そして段々と良い香りが。
 
 
包丁で野菜を切りながら、マーモンは先程の事を思い出す。
 
 
 
「じゃあ作ってよ」
 
「……はぁ?!」
 
「僕は自炊なんてやった事ないしね。でも見たら出来るかも」
 
「でも5円チョコ……」
 
これは帰ってからゆっくり食べるつもりだったのだ。
だがそこは雲雀恭弥、そんな事は気にしない。
 
「だから何?そんなのいつだっていいでしょ。あぁ、別に買ってもいいけど……その身長でレジどうするの?」
 
「日本もそれほど薄情な国じゃないみたいでね、一言言えば赤ん坊だと思って向こうがしゃがんでくれるのさ」
 
浮く事も出来るが、騒ぎになるのでそれはしない。
 
「実際赤ん坊じゃない」
 
「ムムッ、そんな事言ってると夕飯作ってやらないよ」
 
「へぇ……それはそれで僕にも考えがあるよ」
 
ニヤリと、実にいい笑顔になる雲雀。
マーモンは慌てて「しょうがないな…」と言い直した。
 
 
 
そして、今に至る訳である。
包丁やまな板は特注でルッスーリアが作った物を持ってきた。
食材もここにはなさそうだったのでついでに持ってきた。
ちなみに先程買った5円チョコを取られ、逃げる事は不可能だった。
 
 
 
「…………」
 
雲雀はそんなマーモンの様子を黙って見ていた。
 
なんだか…やはりすごくやりにくそうだ。
かなり高い台に立ち、小さい包丁で大きな食材を切っていく。
慣れてはいるのだろうが、これならば自分がやった方が早いのではないだろうか。
 
 
 
「ム?」
 
いつの間にか隣に来ていた雲雀を不思議そうに見るマーモン。
 
「……スパゲッティ?」
 
「そうだけど」
 
「僕は和食がいいな」
 
「作れないよ和食なんてっ」
 
自慢じゃないが、パスタやサラダくらいしか作れない。
わざわざ文句を言いに来たのかと思ったが、どうやら手伝う気らしい。
テーブルの上に置いておいたスパゲッティを袋から出して、袋に書いてある説明書を見ながらゆで始めた。
 
 
「あ、少し固めにね」
 
「何で?」
 
「後でフライパンに移して、具と一緒に炒めるからだよ」
 
「なるほど」
 
納得したのか、雲雀はタイマーの時間を少し短くした。
 
 
それからは共同作業のような、料理教室のような感じになっていた。
雲雀は自炊をした事がないと言っている割には手際がいいし、覚えも早い。
マーモンの言う事にも素直に従っていた。
 
 
 
 
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