献上小説置き場2

□師弟関係成立秘話
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「完成っ」
 
数十分後、ついにボンゴレスパゲッティが完成した。
マーモンは思わず小さな手でパチパチと拍手をする。
何だか妙な達成感があった。
 
 
2人分よそり、テーブルに運ぶ。
マーモンが座る椅子は座布団が重ねられて高くなっていた。
 
 
そして無言で食べ始める。
 
 
「……………」
 
マーモンは専用のフォークで頑張って小さく麺を丸めて口に入れる。
あさりの旨みが口の中に広がり、麺の固さもちょうど良かった。
 
無言のままの雲雀を恐る恐る見る。
 
 
「……………」
 
雲雀は一口目を飲み込むと、目を丸くした。
そして二口目を口に運ぶ。
 
その様子を見る限り、不味くはなかったのだろう。
ホッとすると、マーモンも続きを食べ始めた。
 
 
 
結局、雲雀は一皿目を素早く食べてさらにおかわりをして、それもペロッとたいらげた。
それはマーモンが一皿目を食べ終わるより早かった。
 
そして終わりに一言
  
「……うん、悪くなかったよ」
 
そう言った。
 
 
無表情に見えるけれど、いつもよりは穏やかに見える。
気のせいだろうか。
 
 
 
「君さ、他の料理も作れるの?」
 
「え?まぁ、パスタ系なら…」
 
「じゃあ明日も来て作りなよ」
 
「何で?!」
 
和食が好きと言っていたのは何だったのだろう。
 
「パスタも悪くないと思ってね」
 
「いや、でも作り方なら本とかネットでも……」
 
「ネットはない。それに僕に料理の本を買えと?」
 
「…………」
 
確かに、並盛の支配者とも呼ばれている彼が料理本など買ったら、街中大騒ぎになるだろう。
 
「報酬は?」
 
「報酬?」
 
「金がなきゃ僕は動かないよ」
 
雲雀はしばらく考える素振りをすると、言った。
 
「5円チョコ」
 
「馬鹿にしてるの?それくらい自分で買うさ」
 
「じゃあ有名店のチョコと、日本の昔のお金」
 
「えっ?!」
 
有名店のチョコも気になったが、日本の昔のお金とやらがすごく気になる。
特にマーモンは最近、ただの金だけでなくそういった今はもうほとんどない札や硬貨を集めていた。
それらは希少価値が上がり、元の値段の何倍もの値打ちがあるのだ。
 
 
「どうだい?」
 
「…………わかった」
 
 
この日から、雲雀のマンションの冷蔵庫には食材が増えた。
料理器具が増えた。
そして、外食が減った。
 
ただし、小さな料理の師匠と少しだけ群れるようになるのだった。
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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