献上小説置き場2

□放課後ハプニング
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「はぁ……」
 
ツナは思わずため息をつく。
昼食後の授業は非常に眠たい。
だが数学なので、それも許されない。
だからと言って、聞いていてもチンプンカンプン。
 
「よーし沢田、この問題はため息が出る程簡単か?前でやってもらおうか」
 
「なっ……」
 
もちろん、1問として解けなかった。
 
 
 
 
そんな最悪な数学の授業も終わり、放課後。
山本は部活でさっさと行ってしまったが、まだほとんどの生徒が教室に残っていた。
ゆっくり帰り支度をしながら、喋ったり雑誌を回したりと自由にしている。
 
そこへ、教室のドアがガラッと開いた。
最初は誰も気に止めなかったが、段々と視線がそちらへ集まる。
そこに立っていたのは、黒いセミロングの髪に長身の女子生徒だった。
当然このクラスの生徒ではない。
 
「あの…誰かに御用ですか?」
 
ドアの近くにいた勇気ある女子生徒が尋ねる。
その長身から、先輩だと思ったようだ。
 
黒髪の訪問者は、小さな声で「獄寺隼人を……」と言った。
 
 
「獄寺君、お呼びよー?」
 
「あ?」
 
ツナと話していた獄寺は、クラスメイトに呼ばれて振り返る。
ドアの方を見れば、見た事のない女子生徒が。
また告白やなんかかと思いため息をつく。
もううんざりだ。
 
だが訪問者は、遠慮する事なく教室へと入って来た。
そして窓際の獄寺の前まで来る。
長い前髪で顔がよく見えない。
だがかなりの長身だ。
 
その瞬間、獄寺は黒髪の訪問者がニヤリと笑うのを見た。
 
「……………」
 
まさか。
いや、この笑い方には見覚えがありすぎる。
 
「おまえ……っ」
 
立ち上がって顔をよく見ようとすると、突然抱きしめられた。
教室内は歓声や悲鳴で溢れ返る。
 
 
「隼人っ、会いたかったぁ〜っ」
 
謎の訪問者は、獄寺の名前を呼びながらぎゅう〜と抱きしめ続けた。
こうして見ても、彼女の方が大きい。
 
「おまえっ……」
 
焦った獄寺が何か言おうとするが、耳元でぼそっと囁かれる。
 
「隼人、黙ってないと今ここで犯すよ?」
 
「っ…!!」
 
 
そう、謎の黒髪訪問者の正体は、ベルだった。
 
ルッスーリアに並盛中の女子用の制服を調達してもらい、黒髪のカツラを被り、ここに潜入してきたのだ。
ちなみに声は裏声に近い感じで高くしている。
 
驚いていたツナだが、ベルが笑いながら口元に人差し指を当てたのを見て正体がわかった。
そのまま黙って傍観者に回る。
 
 
ベルは一旦獄寺を離すと、わざと教室内に聞こえるように話し出した。
 
「もう隼人っ、最近会えてないから来ちゃったよぉ。恋人を放っとくなんて酷いじゃない」
 
獄寺は青ざめる。
何にって、ベルの裏声の気持ち悪さに。
 
だが、クラスメイト達は違っていた。
 
「獄寺、おまえ彼女いたのかよー」
 
「しかも年上!」
 
「知らなかったぁ」
 
全員、ベルの策略にはまっていた。
 
「だから告白されてもオッケーしなかったんだね」
 
「彼女いるから振るって話、本当だったんだー」
 
その言葉にベルが反応する。
 
「彼女…?」
 
「そそそそうだっ!おまえに話あったんだ!ちょっと一緒に来い!」
 
獄寺はそう言って慌ててベルを引っ張る。
そしてツナに一礼し、「すみません10代目、お先に失礼します!」と言ってベルを引きずって教室を出て行ったのだった。
 
 
 
残されたクラスメイト達は一瞬無言になり、次の瞬間ざわざわと騒ぎ出す。
そんな中、全てを知っているツナは「ベルもやるなぁ…」なんて思っているのだった。
 
 
 
 
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