献上小説置き場2

□放課後ハプニング
3ページ/4ページ

 
やっと屋上まで来ると、獄寺はベルの黒いカツラを剥ぎ取った。
 
「あ〜、せっかく似合ってたのにー」
 
「どこが!ってゆーか何でココに来た!しかもそんな格好で!」
 
「………来ちゃマズイ事でもあった?」
 
「…は?」
 
獄寺は思わず後ずさる。
ベルのまとう空気が明らかに変わったからだ。
 
「隼人、学校でモテんだね」
 
「んな事…」
 
「ラブレター沢山貰ってるよね」
 
「………」
 
否定はしない。
 
 
「で?彼女でも出来た?」
 
「は?」
 
「は?じゃなくて。だって、彼女いるからって告白断ってんでしょ?」
 
「それは……」
 
「誰?王子そんなん絶対許さないよ」
 
「……………」
 
完全に怒っている。
女装のせいであまり迫力はないが、空気が鋭い。
 
だがどうやら誤解があるようだ。
獄寺は苦笑しながらカツラをベルの頭に戻した。
 
 
「いるだろ、ここに」
 
「ここ?」
 
ここ、といえば屋上。
今は2人しかいない。
 
獄寺は、いい加減わかれとでも言うように頭をかいた。
 
「おまえだろ!他に誰がいんだよ」
 
「お…れ……?」
 
ベルは間抜けに自分を指す。
 
「だって彼女って…」
 
「だから………確かに、告白は結構される。10代目が聞いてやれと仰ったから仕方なく聞くだけ聞いてるからな。ただいつも、恋人がいるからって断ってんだよ。それを他の奴らが勝手に彼女だと解釈したんだろ」
 
「じゃあ………」
 
「恋人なんておまえ1人で十分なんだよ!っ〜〜言わすな!」
 
怒っているのか照れているのか…いや、おそらく照れているのだろう。
そんな恋人の姿を見て、ベルはやっと頭の中で全てが繋がった。
 
 
 
「しししっ、は〜やと〜っ」
 
「おいっ、抱きつくな!」
 
「ヤだよ、今王子超機嫌いいから〜」
 
しばらく押して引いてが続き、やっとベルの腕の中に獄寺が落ち着いた。
 
 
「…明日、クラスの奴らに何か聞かれたらどーすんだよ」
 
「恋人っつっとけば?」
 
「おまえみたいな生徒がいないってすぐバレんだろ!」
 
「平気じゃね?」
 
「平気じゃねぇ!」
 
「でもさ、恋人いるってわかったから、もう告白してくる馬鹿もそうそういないっしょ?」
 
「まぁ…な」
 
その点に関しては嬉しいかもしれない。
昼休みは貴重だし。
 
 
「…にしても、女装までするか普通……」
 
「するよ〜、隼人の為だったら。それに、ゴミ箱の大量のラブレター見ちゃったらいても立ってもいらんなくって」
 
「あぁ、あれか」
 
「隼人モテすぎ〜…」
 
「おまえだってイタリアではモテてんだろ?お互い様だ」
 
「でも王子は隼人だけだよ」
 
「……それこそ、お互い様だ」
 
そして同時に吹き出す。
楽しそうな笑い声が、屋上に響くのだった。
 
 
 
 
 
 
次の日。
 
「獄寺、昨日の彼女、ホントにここの生徒か?見ない顔だったけど…」
 
「た…他校の奴なんだけど、なんか変装して来ちまったみたいで…」
 
昨日一晩考えた言い訳でなんとか乗り切る獄寺だった。
 
 
それから彼にラブレターを贈る女子生徒の数は激減したそうな。
 
結果的に、ベルの作戦は大成功に終わったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ