献上小説置き場3

□試作品の楽しみ
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※マーモン男の子設定です。
 
 
 
ヴァリアーの地下実験室。
何やら怪しげな機材ばかりが揃っている。
 
そしてその部屋の持ち主は、その小さな手でさらに小さな錠剤を掲げた。
 
 
「出来た…!」
 
静かに、しかし達成感を込めてそう呟いたのは、ヴァリアーの幻術師であるマーモン。
アルコバレーノのバイパーでもある。
 
彼はずっと、この呪われた身体を元に戻す為に実験を繰り返してきたのだ。
その成果が、この小さな錠剤だった。
 
 
 
 
「やっとか」
 
「うん、やっと………って、えぇ!?」
 
この部屋には自分しかいないはず。
鍵もかけた。
考えられるのは………
 
 
「リボーン……」
 
振り返るまでもないが、一応後ろを向く。
神出鬼没なアルコバレーノ、リボーンがそこにいた。

 
 
 
 
 
「で?それは完成なのか?」
 
「まだ試作段階だよ。もし戻っても…せいぜい1時間が限界ってとこかな」
 
「1時間……」
 
リボーンが何かを考えるそぶりをする。
そしてちらっと、マーモンの手にある錠剤を見た。
 
錠剤は2つ……。
 
 
 
「実験台になってやろうか?」
 
「え?」
 
突然の提案に、マーモンは思わず驚く。
まさか、彼がそんな事を言うとは思わなかったからだ。
 
「俺が成功したら、おまえも飲めばいい」
 
「……なんか怪しい…」
 
「嫌ならいいが?」
 
「……………」
 
マーモンは頭をフル回転させて考える。
 
リボーンが何の企みもなしにこんな事を言い出すだろうか…。
だが、確かに自分で実験するにはリスクがありすぎる。
まぁ成功する自信はあるのだが。
 
 
「……わかった。そこまで言うなら実験台になってもらうよ」
 
「ふん」
 
そして、リボーンは帽子を取る。
もし大きくなったら、服はまだしも、この帽子は破りたくない。
 
 
 
リボーンがこのような賭けに出たのには、2つの理由があった。
 
まず、マーモンは薬を自分で試そうとしていた。
何故なら、アルコバレーノはみんな実験台を嫌がるだろう。
そして彼らを騙そうにも、そう簡単にはいかない。
だから、自分で試すしかないのだ。
となると、そんなに危険なものは作らない。
だから大丈夫だろうという、リボーンの考えだ。
 
2つ目は、じきにわかるだろう。
 
 
 
「飲むぞ」
 
「うん」
 
リボーンが錠剤を口に入れる。
さすが、赤ん坊でも飲みやすいサイズになっていた。
 
 
 
 
錠剤を飲み込んでから数分後、リボーンが突然呻き出した。
床に手をつき、胸元を押さえる。
 
「リボーン!?」
 
「身体が……熱い…っ」
 
すると、リボーンの身体に変化が表れた。
手足が伸び、全体的に大きくなり、顔が大人びていく。
 
 
「………ふぅ」
 
髪をかき上げたリボーンは、確かに呪いを受ける前の姿に戻っていた。
長い足、整った顔立ち、切れ長の目。
 
世界中の女性を虜にしてきた最強のヒットマンが、そこにいた。
 
 
 
 
「成功みたいだな」
 
「……だね」
 
そう言い、マーモンはすぐに視線を外す。
今のリボーンは真っ裸だった。
服は伸びないのだから当然なのだが。
 
 
「ほら、おまえも早く飲め」
 
「え?うん……」
 
何故か急かすリボーン。
マーモンは不思議に思いながらも、シーツを被って錠剤を飲み込んだ。
 
 
 
数分後、マーモンも元の姿に戻る。
 
赤ん坊ではない身体は、涙が出る程懐かしかった。
シーツに包まり、服を探す。
だがあいにく、大人用の服はこの部屋にはなかった。
戻った後の事を考えていなかった自分の失態だ。
 
リボーンはといえば、恥ずかしげもく裸のまま堂々としていた。
 
 
 
「ほら」
 
リボーンに腕を引かれ、マーモンは思わず前のめりになる。
そしてリボーンの腕の中に収まった。
 
「ちょっ……リボーン!?」
 
「ベッドはないが……まぁそこのソファーでいいか」
 
「はぁ!?」
 
淡々と述べたリボーンは、焦るマーモンを抱きかかえてソファーに優しく押し倒した。
 
ここまでされて気づかないマーモンではない。
 
 
「ま、まさか……?」
 
「1時間、たっぷり楽しむとするか、バイパー」
 
「ムッ……ムギャアァァ〜!!」
 
 
防音の完璧な部屋の中に、マーモンの叫び声が響くのだった。


 
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