献上小説置き場3

□ダブルデート
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約2時間後。
映画館から4人が出てきた。
 
「ん〜……なんか良かったなー」
 
アバウトな感想を述べる山本。
スクアーロは思ったより機嫌が悪くない。
ザンザスも同様だ。
だが、ツナだけは何故か疲れていた。
 
「何この映画……」
 
チケットを見た時から、恋愛ものだという事はわかっていた。
だが、まさかこんな内容だとは……。
 
映画のタイトルは「この指先に愛を込めて」。
なんとも古臭い感じだ。
そして内容は、イタリアを舞台に男女の危険な恋が描かれていた。
イタリアンマフィアの男が、街で出会った女性に一目惚れをする。
だが彼女は一般人、マフィアの道に引きずり込む事は出来ない。
それでも想いは募るばかりで、ついに2人は恋人同士に。
だが幹部クラスの彼は、敵マフィアにその事を知られてしまう。
彼女を人質にとられ、男は銃を捨てようとする。
だがそこで彼女が一言「愛してるわ」と言い、自分の頭に突きつけられた銃の引き金を引いてしまう。
男の重荷になりたくなかった彼女は、愛する者の為に自ら死ぬ事を選んだのだ。
いわゆる、悲恋物語だ。
 
 
 
流れでそのままダブルデートを続行する事になった一行は、近くの喫茶店で昼食にする事にした。
 
 
「でもさ、剣での戦いがほとんどなかったよなー」
 
「今は銃が主流だからなぁ」
 
未だに映画の話をする山本とスクアーロ。
 
「あ、でもさ、あの最後の台詞が良かったかも」
 
「最後の台詞?」
 
「ん。女の人が死ぬ前に言った“今更銃を突きつけられても、私は全然怖くない”ってやつ。カッコよかったのなー」
 
「その後は“だって貴方はいつも私の心臓を撃っていたじゃないの。銃の弾丸なんかより速く強く、胸を貫かれたわ。愛という、弾丸を”だっけかぁ?」
 
「そうそうっ」
 
そんな会話を聞き、ツナはさらにうな垂れる。
何で?俺がおかしいの?確かにいい話だったとは思うけど……。
まぁつまり、マフィアだの何だのというのが自分達と似ていて少しむず痒かったのだ。
それに台詞が臭すぎるし。
 
 
「……綱吉」
 
「え?」
 
ずっと無言だったザンザスが突然口を開けた。
 
「俺はテメェを人質にとられるなんてヘマはしねぇ」
 
「自分と映画を重ねるなっ!!」
 
そこで昼食が運ばれ、会話は中断された。
 
 
 
 
昼食が済むと、次はカラオケだと山本が言い出した。
 
「カラオケ!?」
 
「おうっ。映画行ってー、カラオケ行ってー、それからホテル」
 
「ホッ…!?」
 
ツナと同じくらい、スクアーロが驚いた。
ザンザスは当然だという顔をしている。
最初からそのつもりだったのだろう。
 
「っていうかさ山本、その計画どっかで雑誌でも読んだの…?」
 
「いや、教えてもらったんだ。ダブルデートしてーんだけど、どうしたらいいかってな」
 
「誰に…?」
 
「ベルに」
 
「「「………………」」」
 
三者が何故か納得。
おそらく半分は面白がってだろうが、それを天然の山本が全て真に受けてしまうのだからタチが悪い。
 
「おい、さっさとカラオケに行くぞ」
 
なんと、ザンザスがそう言った。
絶対に山本の案に乗ったフリしてホテルに連れ込むつもりだ……そう確信するツナであった。
 
 
 
 
 
だがツナは、おそらく初めて、この案を出したベルに感謝したい気分になった。
何故なら………
 
「………超カッコイイ…」
 
思わず呟いてしまう程、ザンザスの歌声は最高だった。
普段から低音だが、リズムに乗せてそれが紡がれるとさらに渋みと色気が増す。
歌はイタリア語でよくわからないが、それが逆にいい。
 
曲が終わり、それでもしばらくツナは固まっていた。
 
「……おい、綱吉?」
 
「………えっ!?あ、ザ、ザンザス、お疲れっ」
 
顔を覗きこまれ、やっと我に返る。
 
「何だ?俺の歌声に惚れたか?」
 
「まっまさか!」
 
真っ赤な顔で叫んでも説得力がない。
気を良くしたザンザスは、カラオケも悪くないな…と思うのだった。
もちろん、邪魔な2人がいなければもっといいが。
 
 
 
トップバッターがザンザスだけあり、次のスクアーロはどうしようかと冷汗を流していた。
初っ端から上手い奴を歌わせんなよなぁ…と責任転嫁をしてみるも、順番は変わらない。
ため息をついたスクアーロを心配してか、山本が笑顔で肩を叩いた。
 
「大〜丈夫だって。俺なんてずっと音痴だからさっ」
 
「武ぃ…」
 
「だから、スクアーロが下手でもわかんねーよ」
 
「…………」
 
喜んで良いのか微妙だ……。
そうこうしている間に、曲が始まった。
 
またしてもイタリア語の歌。
だが山本は目をキラキラと輝かせて、恋人が歌う姿を見ていた。
 
 
そして曲が終わると、すぐに抱きつく。
 
「スクアーロスゲーのなー!!カッコイイのなーっ!!」
 
「そっ…そぉかぁ…?」
 
「おうっ!…なんつーの?いつもより怒鳴ってないっつーか……あっ、ベッドん中で囁いてくれる声にちょっと似てたのなっ」
 
「な"っ……!?」
 
さすが天然だ……遠くからそう思うツナであった。
 
 
 
そしてそれからは、ツナの音痴な歌が披露され、しかしザンザスはご満悦。
何故って、一生懸命歌うツナが可愛かったから。
 
山本も、声量はあるが音程はイマイチ。
だが当然、スクアーロは初めての恋人の歌声に感動しているのであった。
 
 
 
 
 
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