献上小説置き場3

□ある雨の日
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ザー…ザー…
 
 
今日は夕方に突然の土砂降り。
さすがの獄寺でも、傘を持って来なかった。
 
「っすみません10代目!!」
 
土下座して謝る。
ツナも傘を持って来ていなかったのだ。
大事な10代目を濡れながら帰らせる訳にはいかないが、こればっかりは仕方がない。
 
「そうだ10代目、俺のこの上着をかぶっていけば少しは…」
 
「いいよそんなっ!帰りだし、濡れても大丈夫だよ。それより獄寺君も気をつけてね」
 
「勿体ないお言葉…っ」
 
こうして、それぞれが大雨の中慌てて帰って行くのだった。
 
ちなみに山本は部活で、校舎内で筋トレだ。
 
 
 
 
 
「はぁ〜……」
 
やっとアパートについた獄寺は、真っ先に風呂場へ向かう。
濡れて変な感じだし、なにより寒い。
一刻も早くシャワーを浴びたかった。
 
濡れた服を適当にカゴに押し込み、風呂場のドアを開ける。
 
 
 
 
「…………………」
 
 
 
「………あれ、隼人じゃん」
 
浴槽に浸かっているベルがいた。
 
 
 
急いで脱衣所に逃げようとしたが、それより早くベルが浴槽から這い出て獄寺を風呂場にとどめる。
時間でいえば、一瞬のことだった。
 
「逃げることないじゃん」
 
「こんな狭い場所にテメェといられっか!」
 
「そういえば一緒に風呂入ったことなかったよね〜。まぁ、いっつも隼人が逃げてたんだけど」
 
ベルはそう言いながらも、無理矢理獄寺を座らせてシャワーを浴びせる。
そして頭を洗い始めた。
 
「おまっ……そんくらい自分で…」
 
「ダーメ、王子が洗ってやるよ」
 
逃亡を諦めた獄寺は、ここは言い合いをするよりさっさと終わらせた方がいいと見て、おとなしく前を向いた。
 
 
「うわっ、隼人、身体超冷えてんじゃん!」
 
「傘持ってかなかったからな」
 
「しししっ、お互い様ってか」
 
「あ?」
 
「王子も雨ん中走ってきたから、風呂入ってたんだ」
 
「ったく…予測出来なかった天気予報が悪い」
 
「確かに」
 
 
そんなこんなで頭を洗い終わり、ベルがボディーソープに手を伸ばした。
 
「おいちょっと待て、身体は自分で洗うぞ」
 
「ダーメ」
 
「ダーメ、じゃねぇ!こればっかりはおとなしくしてたまるか!!」
 
ギャーギャー騒ぎながら取っ組み合っていると、足が滑ってどちらともなく倒れこんでしまった。
そして気づけば、仰向けのベルの上に重なるように獄寺がうつ伏せで倒れていた。
すぐ近くに顔がある。
 
 
「っっ!!??」
 
すぐにどかなければならないのに、獄寺はベルから目が離せなくなっていた。
 
濡れて重たくなった前髪は、邪魔なのか少し分けてある。
そしてそこから覗く、普段は見られない隠された瞳。
 
しばらく見とれていると、下半身に違和感を覚えた。
 
「隼人…?王子もう、結構限界なんだけど……」
 
それを聞き、獄寺は勢い良く離れる。
 
「わっ…悪ぃ」
 
思わず謝ってしまう。
 
「いや、隼人があんまりにも熱っぽい顔で誘ってくるからさ。ただでさえ裸見るだけでヤバイのに、さっきのはマジでヤバかったっつーの」
 
「バッ…バカかっ」
 
そしてそれからベルは獄寺の身体を洗うことを諦め、だがそうなると身体を洗っているところを見られる訳だ。
もちろん、ベルがここで出て行くはずもない。
ある意味、洗われる以上の羞恥プレイだ。
 
 
「……おい、出ろ。浴槽せめーんだから」
 
「ヤだ。一緒に入ればいいじゃん〜」
 
「絶対にごめんだ!!」
 
「まぁまぁ、あったまらないと寒いっしょ?」
 
「………………」
 
実は、結構寒い。
いますぐ、その湯気のたつ温かなお湯に浸かりたい。
嫌だというより、意地が邪魔をしている。
 
「風邪ひいて王子の手厚い看病受けたい?」
 
「それだけは嫌だ……」
 
結局、湯に足を入れるのだった。
 
 
 
向かい合って座ろうとしたが、何分狭い。
ベルの言うように、同じ向きで彼の上に座るしかないだろう。
こんなこと、普段では絶対にやらない。
 
 
「…………おい」
 
「ん?」
 
「何か……当たってるんだが…」
 
「気にしない気にしない」
 
「するだろ!!」
 
「だってこの体勢だよ?無理ないじゃん」
 
「……………」
 
仕方ないといえば仕方ないのだが、何よりのセクハラだろう。
 
 
そのあとは、さらにセクハラされたりじゃれ合ったり……最後は獄寺が逃げるように浴槽から飛び出るのだった。
 
 
 
 
 
「ねーねー隼人〜」
 
「…………」
 
「んな怒んないでよ」
 
むすーっとしてソファで足を組む獄寺。
別に怒っているというか、なんだか流された自分が悔しいだけだ。
 
「ボンゴレパスタ作ってやっからさ」
 
「………スープもつけろ」
 
「しししっ、了〜解っ」
 
立ち上がると、ご機嫌で台所へ向かうベルなのであった。
 
 
 
 
 
 
→後書き
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